第5位
『ムーンライト』
アフリカ系のLGBTというマイノリティにフォーカスし、アカデミー賞を受賞した『ムーンライト』は、せつないラストと映像美が高評価。
審査員コメント
饒舌な映画とは対極を成す作風。音数の少ない名曲のように主人公と周りの人々の人生を描いた、行間を読ませていくラヴストーリー。心で見ている感覚になり、サラッとしているようで余韻を残すエンディングが秀逸。(伊藤なつみ/音楽ジャーナリスト、編集者)
月明りに照らされブルーに輝く肌、車のボディに反射する空など、カットや色彩の美しさはまるで美術品のよう。主人公が置かれた過酷な生活環境に、セクシャルマイノリティーとしての葛藤に、観ていて終始泣きそうになった。(門間雄介/編集者、ライター)
差別や偏見、欺瞞、虐待のスパイラルが黒人少年の人生に及ぼす影響、というとバイオレンスなフッド映画を思い浮かべがちだけど、リリカルなラブストーリーに仕上げた監督と脚本家コンビのセンスがピカイチ。LGBT差別からの少年院入り、やがてはドラッグディーラーとして生きるしかなくなる主人公カイロンの人生は私個人とはかけ離れているが、少年時代の無垢で痛々しいカイロンの姿が冒頭で頭に焼き付けられるので、ずっと心を寄り添わせていられる構成もうまい。役者陣も全員好演!(山縣みどり/ライター)
あたしが推さずに誰が推す、な人間ドラマ。20年以上引きずるゲイの初恋をベースに、アメリカの社会の歪みを描ききるという監督の手腕に感激。(よしひろまさみち/映画ライター)
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『ムーンライト』(バリー・ジェンキンス監督/トレバンテ・ローズ、アンドレ・ホランド)
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校でいじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ。やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。そんななか、ある事件が起こり……。プロデューサーとしてアカデミー賞受賞作『それでも夜は明ける』も手がけたブラッド・ピットが製作総指揮。