第3位
『ノクターナル・アニマルズ』
トム・フォードの監督第二作目はさらにドラマチックで一時も目が離せない、完璧な構成のミステリー。
審査員コメント
噛めば噛むほど面白い映画。「男は強い」という固定概念とか、コントロールフリークな生き方とか、それでも世のなかにロマンティックが存在すると信じるわずかな心などに、恐ろしいほど冷や水をかけられ身が引き締まります……。(渥美志保/映画ライター)
トム・フォードがモダンアート界で虚無に陥ったヒロインに自らを重ね、スリリングなゲームを仕掛ける。ヒロインの孤独と悔恨が蒼く凍りつくスクリーンには見つめながら、早くも巨匠の風格を漂わせるフォードの才能に唸らされる。(久保玲子/映画ジャーナリスト)
さまざまな意味でリスクを恐れないトム・フォードのクリエーターとしての正しい野心に感服! デビュー作『シングルマン』を超え、今最も注目すべき監督のひとりであることを証明した。(立田敦子/映画ジャーナリスト)
トムフォードの審美眼。何度も見るたびに発見がある。まさにアートフィルム。そこにあるトムフォードにしか作りだせない高貴な時間軸。(中山路子/「ミュベール」デザイナー)
劇中劇で進むテキサスの理不尽で非情な暴力的世界と、主人公を取り巻くLAのクールだけど空虚でヴァニティな世界が交互に描かれるパラレル感がヤバい。グイグイ引き込まれる。(南馬越一義/ビームス創造研究所シニアクリエイティブディレクター)
一瞬足りとも目が離せないシーンの連続に、手に汗を握りながら映画を観たのは久しぶり。計算され尽くした画作り、残虐な描写の裏に隠されたメッセージの数々、見た後しばらく引きずられる余韻の残る作品。トム・フォードの才能に改めて脱帽。監督2作目にして最高傑作。(Y.M/エル エディター)
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『ノクターナル・アニマルズ』(トム・フォード監督/エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール)
アート・ギャラリーのオーナーとして、裕福な生活を送るスーザンのもとに20年前、別れた夫から小説が届く。タイトルは「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」。家族旅行に出かけた一家が、ハイウェイで暴漢に襲われ、妻と娘が連れ去られるという内容だった。その残虐な内容にいつしかスーザンは自分が夫にした仕打ちを思い出し、小説と現実の境目があいまいになっていく。衣装、インテリア、小道具、どれひとつ見逃せない、計算し尽くされた世界観。