アカデミー賞を量産する演技コーチが語る、日本人がハリウッドで活躍するために必要なこと
2017/02/03(金)
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『ラストサムライ』

Photo : Aflo

『ラストサムライ』が日本人俳優に希望を与えた

Yoko:うーん、そう、そうね。13年ほど前に、ハリウッド映画の『ラストサムライ』があって、日本人が出演することになって、それが本当に助けになったわ。「自分たちにも出来るんだ!」ってね。あれが日本の俳優に希望を与えたと思うの。希望を生み出すことができた。証拠を見ることができたからよ。彼らができたのなら自分にもできるはずだ、自分も挑戦できるってね。

Ivana:希望のある環境作りこそが、私の人生をかけた旅路だと言えるわ。希望を生み出すこと。

Yoko: それって本当に素晴らしいわ。

Ivana: 俳優に希望を与えることもそうだけど、もっと大事なのは人類に希望を与えることね。変化はすばらしいことだし、変化することで気分もよくなるわ。「産みの苦しみ」ともいうでしょう。「産み」には必ず苦しみが伴うと。産みの「苦しみ」の部分を一旦通り抜けると……それはものすごく美しい体験よ。これは、芸術を通じて人を助けるというプロセスよね。私たちはどんな職業の人でも、どんな夢をもっている人でも、どんな欲求がある人でも、私たちの仕事を通して、彼らが生きる道を見つける手助けができるの。より幸せに、より進化して、より健康的な場所に連れていくことが出来るわ。誰もが朝起きた時に、「最高!」って言える世の中になったら素晴らしいと思わない?(笑)「また新しい一日が来た!!」ってね。

Yoko: 「私は生きている!」ってね。

Ivana: ただそういう人は稀でしょう。大抵は、「ああ、また1日が始まった(ため息)みたいな人の方が多い。同じような毎日が続くと感じてしまう。でもアーティストの仕事は、「変化を起こせる可能性はある」、「今日という日を楽しみに迎えさせてくれるような物事は起こりえる」、「予想もしてもいなかった事が起こる可能性はある」と伝えることだと思うの。だから私は自分の仕事が大好きなの。仕事の内容は毎回違う、関わる人も毎回違う、プロジェクトも毎回違う。

「ヴァンパイア・ダイアリーズ」

Photo : Aflo

Ivana: 私は今、クレイジーな未来を描いたSF作品の監督と仕事をしているし、「ヴァイキング〜海の覇者たち〜」というテレビの歴史ドラマにも関わっているわ。「ヴァンパイア・ダイアリーズ」の仕事もしているし、他にもいろいろな分野の作品に関わっているわ。それからイラクの獣医の実話に基づいた作品、これにはスタローンも出演しているの。話し出したら止まらないくらい、崇高なものから馬鹿げたものまでね。
それからクレイジーなBBCのニュース番組があって「Bad Behavior」というの。これは文字通り素行が悪い人々についての話なんだけど(笑)、本当におもしろくて、ものすごくいい作品。超メロドラマからSF、人の部屋が吹き飛ばされるような作品から、究極のコメディにまで関わってる。私は世界で一番楽しい仕事をしていると思うわ。最高の仕事よ!

Yoko: 素晴らしいわね。

―――先程、人が変わるのはとても難しいと出てきましたが、日本人が一番変えなければいけない事として、イニシアチブを持つとか、自分で主体性を持って演技をして働くことだと思ってしまうのですが、実際に日本人と日本人の俳優と向き合ってみてそのことは感じましたか?

Ivana:私がそれを感じたかって? 正反対だったわ。昨年来日した時、私もそうではないかと思っていたんだけど。そんな話を聞いていたから。だけど実際に体験したのは……熟したメロンのイメージってわかるかしら。ちょっと触るだけで、パーンとはじけて開くような。まさにそれだったの。一日中ずっとよ。

Yoko: それは素晴らしい!

Interpreter: Tetsuya Shiraishi Movie : Maho Tomono

  • Ivana CHUBBUCK(イヴァナ・チャバック)
    ハリウッドが絶大の信頼を置くアクティングコーチ(演技指導者)。指導した生徒にはハル・ベリー、シャーリーズ・セロン、ジム・キャリー、メグ・ライアンといった錚々たるメンバーが並ぶ。「スターコーチ」との異名もとるハリウッドトップのアクティングコーチの一人。現在も自身のスタジオで生徒たちを指導するかたわら、映画の撮影セットにおいて、トップスターたちにプライベートで指導も行っている。人間の深層心理への洞察力に基づくその演技指導は、俳優だけでなく、歌手、脚本家、監督、プロデューサー、経営者、ビジネスエグゼクティブら広い層の支持を集めている。2015年、2016年と日本でもワークショップを開催した。www.ivanachubbuck.com

    奈良橋陽子(ならはし・ようこ)
    1947年生まれ。外交官だった父の仕事に伴い、5歳からカナダに移住。16歳で帰国したのちICUを卒業。その後渡米し、ニューヨークの演劇専門学校で学ぶ。帰国後、ミュージカル「ヘアー」「Monkey」などを演出。舞台・映画『THE WINDS OF GOD』は国連芸術賞、日本映画批評家大賞を受賞。ゴダイゴの「銀河鉄道999」「Monkey Magic」などの作詞家として活躍後、ハリウッド映画の日本人キャスティング・ディレクターとしても活躍中。主な作品にはトム・クルーズ主演『ラストサムライ』、『SAYURI』『バベル』『終戦のエンペラー』などがある。

  • 『イヴァナ・チャバックの演技術:俳優力で勝つための12段階式メソッド』

    ハリウッドの映画業界から絶大な信頼を寄せられる、トップ演技指導者のイヴァナ・チャバックによる演技バイブル。本作では内面や心情の洞察力を高める演技法により、役だけでなく俳優自身のさまざまな障害を克服する方法を解説。単なる演技法の領域を超え、通常の生活にも使えると本国アメリカでは出版と同時にベストセラーになった本作がついに日本語訳で発売!
     
     

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