『ラ・ラ・ランド』の原型といえば……
『ニューヨーク・ニューヨーク』(1977年)
現在『沈黙-サイレンス-』(2016年)が公開中のマーティン・スコセッシは、ロバート・デ・ニーロとライザ・ミネリ共演で、大作ミュージカル『ニューヨーク・ニューヨーク』を監督。当時のライザ・ミネリは、『巴里のアメリカ人』のヴィンセント・ミネリ監督と『オズの魔法使』(1939年)の主演女優ジュディ・ガーランドの娘というミュージカル界のサラブレッドとして、彗星の如く現れた女優だった。この作品はフランシス・フォード・コッポラ監督の『ワン・フロム・ザ・ハート』(1982年)同様、興業的には大失敗し、“ハリウッド黄金期”のミュージカル映画を復活させたいという巨匠たちの想いは叶わなかった。
『ニューヨーク・ニューヨーク』は、『ラ・ラ・ランド』鑑賞後にぜひ観て欲しい作品。東海岸のニューヨークと西海岸のロサンゼルスという対比。ジャズミュージシャンを目指す男性と、女優を目指す女性との恋愛。人海戦術ともいえる大量のエキストラを起用したモブ(群衆)シーン。そして、歌と踊り。“叶わぬ想い”という点においても『ニューヨーク・ニューヨーク』は『ラ・ラ・ランド』の原形のような作品なのだ。
<ストーリー>
第二次世界大戦が終結したニューヨークで、ジミーはフランシーヌと出会う。サックス奏者、歌手として活躍するようになったふたりはやがて恋に落ち、結婚。しかしフランシーヌのレコードデビューをきっかけに、結婚生活に溝が生まれる。
Text: Takeo Matsuzaki Photo: Getty Images, Aflo
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『ラ・ラ・ランド』
LAの映画撮影スタジオのコーヒーショップで働く、女優の卵ミア(エマ・ストーン)は、ジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴスリング)と出会い、恋に落ちる。成功の階段を駆け上がっていく過程で、すれ違っていく、ふたりの関係・・・・・・。ジャズ・ドラマーをテーマにした『セッション』でアカデミー賞3部門を受賞した新鋭デミアン・チャゼルのジャズ3部作の完結編。見事なジャズシーンに、今回はさらにダンス・パフォーマンス要素を増やして、センチメンタルな若い恋の行方を華やかなミュージカルに仕上げた。往年のハリウッド女優のような、エマのグラマラスなファッションも見どころ。2017年2月24日(金)、TOHOシネマズみゆき座ほかで公開予定。 -
松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。