映画全編を彩るカラフルでポップな色彩
『ロシュフォールの恋人たち』(1967年)
『シャルブールの雨傘』の主演カトリーヌ・ドヌーヴ、監督のジャック・ドゥミ、音楽のミシェル・ルグランのコンビは、『ロシュフォールの恋人たち』でも再度組んでいる。このミュージカルでは、美術や衣装に青・赤・黄など『ラ・ラ・ランド』でも印象的に使われている色彩が映画全編を纏い、デイミアン・チャゼル監督も、「『ラ・ラ・ランド』の色彩感覚はこれを真似た」とインタビューで答えている。ドゥミの2本は、モノクロからカラーへの移行が始まった1930年代のハリウッド映画にオマージュが捧げられた。
色の付いていないモノクロ映画に色が付くようになった時代。ハリウッドのカラー映画は、いかにも「色を使っていますよ」という派手な色使いを施していた。『ラ・ラ・ランド』の色彩感覚がどこか“クラシカル”と感じるのはそのためだ。そして『ロシュフォールの恋人』には、奇しくも『理由なき反抗』と似た要素がある。この映画はカトリーヌ・ドヌーヴと、彼女の実姉であるフランソワーズ・ドルレアックが共演。彼女たちは双子の姉妹を演じているが、ドルレアックは、交通事故によって25歳の若さで急逝。『ロシュフォールの恋人たち』が日本で公開された時、彼女もまたこの世にいなかったのだ。
<ストーリー>
軍港の街ロシュフォールにお祭りの季節がやって来た。ショーの準備を始める旅芸人のエチエンヌとビルは、美人の双子姉妹ソラジュとデルフィーヌに新たな恋の予感を覚えていた。街中が沸き立つ中で、其々の恋心が交錯してゆく。
Text: Takeo Matsuzaki Photo: Getty Images, Aflo
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『ラ・ラ・ランド』
LAの映画撮影スタジオのコーヒーショップで働く、女優の卵ミア(エマ・ストーン)は、ジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴスリング)と出会い、恋に落ちる。成功の階段を駆け上がっていく過程で、すれ違っていく、ふたりの関係・・・・・・。ジャズ・ドラマーをテーマにした『セッション』でアカデミー賞3部門を受賞した新鋭デミアン・チャゼルのジャズ3部作の完結編。見事なジャズシーンに、今回はさらにダンス・パフォーマンス要素を増やして、センチメンタルな若い恋の行方を華やかなミュージカルに仕上げた。往年のハリウッド女優のような、エマのグラマラスなファッションも見どころ。2017年2月24日(金)、TOHOシネマズみゆき座ほかで公開予定。 -
松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。