映画に出てくる“天文台”は、この映画のオマージュ!
『理由なき反抗』(1955年)
『ラ・ラ・ランド』の1950年代ハリウッド映画に対するオマージュはこれだけではない。映画の中でライアン・ゴズリングがエマ・ストーンを映画に誘う場面。そこで上映されているのが、ジェームズ・ディーン主演の青春映画『理由なき反抗』。
50年代を代表する“スター”、ジェームズ・ディーンは、『エデンの東』(1955年)、『理由なき反抗』、『ジャイアンツ』(1956年)と僅か3本の主演作を残し、24歳の若さでこの世を去った。日本で『エデンの東』が公開された時、彼が既にこの世にいなかったことは、彼の伝説を生む由縁に。そういう意味で、ジェームズ・ディーンという“スター”は、「叶わないこと」の象徴のようにも扱われ、『ラ・ラ・ランド』の伏線にもなっている。
映画でエマとライアンが車で繰り出す天文台は、『理由なき反抗』のロケ地となったグリフィス・パーク天文台。天文台までの坂を車で登ってゆくショットは、『理由なき反抗』の同じ場面とすごく似ている。
ちなみにこの頃のハリウッド映画界は、スターがスターであった時代。「星のように手が届かない」ことからハリウッドの人気俳優は“スター”と呼ばれたが、現代のようにSNSで“スター”が身近な存在になったこととは正反対。<スター>という言葉は、『ラ・ラ・ランド』でライアン・ゴズリングが歌う「City of Stars」の歌詞にも登場。この歌の中の“スター”は“星”のことだが、「私のためだけに輝く」という一文には、様々な意味が込められている。それは、夜空に輝く星であり、想いを寄せる相手のこと。“スター”そのもののことでもある。
<ストーリー>
17歳のジムは新たな街に引っ越してきて早々、泥酔したうえ暴行容疑で警察に連行されてしまう。翌日、警察署で知り合ったジュディと高校で再会。彼女は不良グループの仲間だっため、ジムは彼らに目を付けられてしまう。
Text: Takeo Matsuzaki Photo: Getty Images, Aflo
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『ラ・ラ・ランド』
LAの映画撮影スタジオのコーヒーショップで働く、女優の卵ミア(エマ・ストーン)は、ジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴスリング)と出会い、恋に落ちる。成功の階段を駆け上がっていく過程で、すれ違っていく、ふたりの関係・・・・・・。ジャズ・ドラマーをテーマにした『セッション』でアカデミー賞3部門を受賞した新鋭デミアン・チャゼルのジャズ3部作の完結編。見事なジャズシーンに、今回はさらにダンス・パフォーマンス要素を増やして、センチメンタルな若い恋の行方を華やかなミュージカルに仕上げた。往年のハリウッド女優のような、エマのグラマラスなファッションも見どころ。2017年2月24日(金)、TOHOシネマズみゆき座ほかで公開予定。 -
松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。