撮影中、ライアン・ゴズリングが何度も見た名作!
『雨に唄えば』(1952年)
映画『ラ・ラ・ランド』は、1950年代の“ハリウッド黄金時代”と呼ばれる時期に製作された映画へのオマージュに溢れている。それは、“映画界が一番華やかだった時代”、または“アメリカが輝いていた時代”を回顧することで、この映画を“ハリウッド讃歌”にしようとしているからだ。
映画が音のない“サイレント映画”から、音を発する“トーキー映画”へと移行する1920年代後半のハリウッドを舞台にした『雨に唄えば』。主演のジーン・ケリーが、どしゃぶりの雨の降る中、踊り唄う「シンギング・イン・ザ・レイン」はこの映画を象徴する歌であり、映画史に残る名場面中の名場面。『ラ・ラ・ランド』の主役、ライアン・ゴズリングはインタビューで「この映画を観て現場に挑んだ」と語っている。
『雨に唄えば』のヒロインは、ハリウッドでスター女優になる夢を抱いているが、同じように『ラ・ラ・ランド』ではエマ・ストーンの演じたヒロインが女優になるべく日々オーディションを受けている。現代の視点から観ると、『雨に唄えば』は単なる“昔の映画”だが、公開当時の視点でも、およそ四半世紀前の“昔のハリウッドを描いた映画”。“ハリウッド黄金時代”の作品にも、その時代にとって“華やかだった時代”を回顧するという映画が作られていたことは興味深い。
<ストーリー>
人気スターのドンとリサは10本以上の作品で共演する人気コンビ。しかし映画がサイレントからトーキーへと移行する中で、映画会社はリサの悪声に頭を抱えていた。そんな時、ドンは女優の卵でコーラスガールのキャシーと出会う。
Text: Takeo Matsuzaki Photo: Getty Images, Aflo
-
『ラ・ラ・ランド』
LAの映画撮影スタジオのコーヒーショップで働く、女優の卵ミア(エマ・ストーン)は、ジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴスリング)と出会い、恋に落ちる。成功の階段を駆け上がっていく過程で、すれ違っていく、ふたりの関係・・・・・・。ジャズ・ドラマーをテーマにした『セッション』でアカデミー賞3部門を受賞した新鋭デミアン・チャゼルのジャズ3部作の完結編。見事なジャズシーンに、今回はさらにダンス・パフォーマンス要素を増やして、センチメンタルな若い恋の行方を華やかなミュージカルに仕上げた。往年のハリウッド女優のような、エマのグラマラスなファッションも見どころ。2017年2月24日(金)、TOHOシネマズみゆき座ほかで公開予定。 -
松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。