男らしさって何? なぜ日本社会に“ジェンダーレス男子”は必要なのか
2017/05/30(火)
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UsukeDevilさんのインスタグラムより courtesy of screamer29 via Instagram

なぜ日本社会にジェンダーレス男子は必要なのか

ジェンダーレス男子は昔から存在していた!?

もしかしたら、彼らはずっと前からいたのかもしれない。学校の同級生の多くが追う流行とは違うもっと尖ったものを好み、女性誌の文化も男性誌の文化も綺麗と思うものは躊躇せずに盛り込む、繊細な感覚を持つファッションラバー。或いは男性的なマッチョイズムにいまいち乗り切れず、また自分の女性的な体型や顔に悩む若者。男の子向けに与えられた道具ではなく、例え女の子向けにデザインされたアイテムを纏ってでも自分のスタイルを作り上げようとするクリエイター。ずっと昔から確実にいたであろう。そして彼らの一部は独自の世界観で全世界を魅了するスタイルを築き上げ、今もなおエンターティメントやファッション業界に名を残す。

しかし彼らの多くは、学校に馴染めないまま、或いは社会に受け入れられないまま、理解者に出会えないままに孤立し、特に認められることもなく、誰かの目に留まることがないまま埋もれていたとも考えられる。派手髮やカラコンは確かに現在の流行という側面が強いだろうが、それに準ずる別の何かは、とうの昔から、あちらこちらで小さな煌めきを放っていた。流行を追う大衆の目には留まらないほど小さなものであったとしても。

同じくジェンダーレス男子界で人気の高いとまんさんのインタビュー動画

その各所に散らばる小さな煌めきは自ら大きくなり、また遠い場所にいた別個の似た感性同士が結合することで、可視化した。彼らはまさにSNSによって発掘され、またそれによって成長された存在とも言える。そして幸運なことに、インターネット空間が彼らを花咲かせたのと時を同じくして、それまでのジェンダー偏重社会は徐々に価値観の自由度を増し、彼らを受け入れる準備を整えつつあった。SNSによって発見され、また発信しだした彼らと、地道な運動によって切り開かれてきたジェンダーフリー社会。このふたつの奇跡的に良い相性が「ジェンダーレス男子」という一つのムーブメントを可能にしたのだとしたら、タイミングの神様が気まぐれに産んだ美しい息子と呼びたい。

「最初は周囲からもメイクやめなよとか女々しいとか言われて、間違っているのかな? と思うこともあった。でも自分に似合うものや自分が綺麗だと思うものを追求して発信を始めたらフォロワーが伸びて、気づいたら褒めてもらうことの方が多くなっていた」(UsukeDevilさん)

text: Suzumi Suzuki

  • 鈴木涼美/社会学者、作家。1983年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。記者として在籍した日本経済新聞社を退社後、執筆業を中心に活動。著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)や『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)など。2017年5月25日には、新著『愛と子宮に花束を』(幻冬舎)を発売。7月1日には、同名小説を原作とした映画『身体を売ったらサヨウナラ』が全国順次ロードショー。
    Twitter:@Suzumixxx
    http://lineblog.me/suzukisuzumi/

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