ジェンダーレス男子誕生の背景解体
アイコンはなし。特定の雑誌や芸能人からの解放
かつて若者のファッションにおいて、新しい流行を生み出しながらジャンルを形成し、潮流をつくっていたのは圧倒的にファッション誌。「何の雑誌を読んでいるか」がどんな店でどんな服を選ぶかを指し、雑誌で得られる情報がそのまま若者の知識として蓄積。ファッションリーダーなどと言われるのはモデルや芸能人で、人気タレントの着た服が完売、そんな流れがメインストリームだった。
ジェンダーレス男子の中心的存在である現在の20〜25歳は90年代生まれであり、物心ついたときにインターネット社会は完成しつつあり、高校時代はスマホがちょうど普及した頃。若者の情報収集手段は急速に多様化し、「エルやヴォーグ、ナイロンなどのインターナショナルなファッション誌も読みつつ、ブログやタンブラーなどでおしゃれな人を見つけてスタイルの参考に」(UsukeDevilさん)できる時代に移行。これといって強烈に憧れたり、真似したりした芸能人の名前をあげる人が少なくなり、クラス全員で同じ流行を追うのではなく、より細分化したそれぞれの好みを追求できるようになったことは、ある意味では奇抜なスタイルの生まれる土壌として機能したはずだ。
text: Suzumi Suzuki
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鈴木涼美/社会学者、作家。1983年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。記者として在籍した日本経済新聞社を退社後、執筆業を中心に活動。著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)や『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)など。2017年5月25日には、新著『愛と子宮に花束を』(幻冬舎)を発売。7月1日には、同名小説を原作とした映画『身体を売ったらサヨウナラ』が全国順次ロードショー。
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