英国全裸エリート大学生が闘う“トランプ後”の不寛容な社会
2016/11/15(火)
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名だたる世界的ヒットドラマを生み出してきたBBC作品は日本のファンも多くNHKでの放送もたくさん。これらドラマには女性の不平等性やゲイキャラクターへの差別など織り込まれている。

Photo : Aflo

英BBCの本気 ― ポリティカリーコレクトネス、やるなら今でしょ!

NHKと同様、国民からの受信料(テレビを買う時にBBCカードを同時に購入する仕組み)で国際放送以外の番組を製作、放映している英国放送協会、BBC。そのため、国営放送としての看板を断固拒否し、数々の不祥事や非難を受け続けながらも潤沢な資金をもとに他の追随を許さないクォリティの番組を制作可能なイギリスで最も裕福な放送局だ。
 
そのBBCが10月、BBCの仕事を請け負う、あるいは放映を委託する場合のプロデューサー陣、及び制作会社各社に新たな制作ガイドラインを設けた。こちらのガイドラインでは番組に登場する人物及び制作チームにおいて必ずマイノリティ(人種的マイノリティ、障害者、そしてLGBTQ)の人々を参加させること、制作において賃金が発生しないインターンシップの利用を禁止(インターンの名のもとの雇用差別であるとして)すること、そして様々なバックグラウンドをもつ人々に会社負担で各種トレーニングや有給での職業訓練をうけさせることを明記している。このガイドラインには罰則こそないものの、このガイドラインさえ満たしていれば、プロダクションにゴーサインがかかりやすくなると明記されている。これはアファーマティブアクション=積極的な差別是正。言い換えればやたらと米国で、また浸透してもいない日本でもなぜか叩かれるポリティカリーコレクト(政治的・社会的中立性)のための姿勢だ。

『スター・トレック』最新作に出演している黒人俳優イドリス・エルバ(中央)もBBC長寿ドラマ「刑事ルーサー」で主役。ちなみに同映画で主要キャストのひとりが同性カップルである設定に。なぜ突然? と思ったら脚本が英俳優のサイモン・ペッグによるもの。英国人にはポリティカリーコレクトネスは当然の事?

Photo : Getty Images

今年の4月にBBC自身が2020年までに制作する番組の出演者の半数を女性にする目標を掲げている。現在、BBCで女性スタッフが占める割合は48.4%。上級管理職に就いているのは41.3%。それを半数以上にし、また15%のスタッフと管理職を黒人、アジア系、そしてマイノリティとしてのバックグラウンドを持つ人にし、同じ数字を番組上での出演及び主演に割り当てている。そして、障害者及びLGBTQの人々も8%以上をスタッフ、制作、管理職、出演及び主演者として占めるようにするというものだ。BBCは以前から人種・性的・職業的マイノリティを主役にドラマを制作することで有名であったし、こちらの施策はそもそも2014年から開始されていたが、制作ガイドラインとしてはっきりと意思表明されたのは今回が初めて。

Photo : Aflo

2015年に放映され、世界中で話題になったBBC制作のドラマ「ロンドン・スパイ」(写真上)でもこうした制作及びキャスティングのダイバーシティぶりを垣間見ることができる。
 
物語は実際に起きた過去のMI6のゲイスパイ変死事件及び、当時のゲイが託った現実(実際は内部の犯行だった)を基にしており、キャストのベン・ウィショー、マーク・ゲイティスたちは実生活でもゲイであり、制作でもエグゼクティブ・プロデューサーが女性、脚本のトム・ロブ・スミスもゲイ。作品中でも、60年代当時のゲイへの差別や女性進出を阻む壁、そして階級間格差などがプロットの重要なファクターのひとつにもなっている。
 
これはあくまで表出している人を数えただけにすぎないが、イギリス人口におけるLGBTQの割合は1.5%、アメリカでは10%前後に及ぶと言われている。特にロンドン市内においてはその割合は2.5%以上に上る。案外少ない数字と取るか、「マジョリティと同様に重要である」と取るか、それ如何でビジネスの舵取り自体が過ちとなるか、勝ちと転ずるかはまた、ストレート・アライズの声にも影響されてくる。だからこそ、ストレート・アライズであり続けることが世界の均衡を保つひとつの大きな力となり得るのだ。

Text : Ryoko Tsukada

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