英国全裸エリート大学生が闘う“トランプ後”の不寛容な社会
2016/11/15(火)
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Brexit、トランプ大統領の次なる脅威はフランス

彼の懸念は現実問題として既に浮上してきている。トランプ勝利の選挙日の夜、カリフォルニア州に住むゲイの男性、クリス・ボールが割れたガラス瓶でトランプ・サポーターに顔を滅多打ちにされた。暴行を加えたサポーターたちは「俺たちには新しい大統領がいるんだよ、このクソオカマ野郎」と叫びながら彼を殴打したという。この事件を報じた「アティチュード」のサイトにあるように、彼は見るに耐えないほど全身血まみれになってしまった(閲覧注意)。

Photo : Getty Images

トランプ勝利後のアメリカのレイシズム発言や行動は既に全米で起こっている。トランプ自身は特に知性面で優れているわけでもなく、逆にヒラリー擁護およびサポートを積極的に行うメディア活動によって彼の発言が単純にデマゴーグ化され何度も何度も繰り返された結果、逆の効果、つまりそのデマゴーグを真に求めている層、つまり白人で、仕事がないか低賃金労働で、教育のない男性、そしてヒラリーのような何もかもを得ているのが気にくわない同様の層の女性たち(出口調査では、白人女性の53%がトランプに投票し、43%がヒラリーに投票している)ら、“シャイ・トランプ・ヴォーター(表出しないトランプ支持者)”らによって逆転勝利を収めてしまった。しかも副大統領はインディアナ州知事時代に「宗教の自由回復法」に署名し発効させ、後に法修正に追い込まれたガッチガチの保守であるマイク・ペンス。彼は同性愛は「修正できる」という思想の持ち主だ。他にも、ニュート・ギングリッチなど、大手保守の「白人・キリスト教・しかも保守的過ぎて仕事にあぶれかけてるエスタブリッシュメント」を中心に組閣が進んでいる。
 
トランプが勝利しただけで、人々のアティチュードが全く変わってしまった。ヒラリーを推していた人々は途方に暮れ、アメリカ版「いのちの電話」がパンクするほどの憔悴状態。方やトランプサポーターは「大統領がこうなんだから、自分だってこうしていい」とあらゆる差別的行為を堂々と恥じることなく行うことがまかり通るようになっている。

Photo : Getty Images

そして、次の脅威は来年2017年に大統領選を控えるフランスだ。常に問題視されながら、あくまで少数派右翼レベルだった国民戦線の元党首ジャン=マリー・ル・ペンの娘マリーヌ・ル・ペン党首へのサポートが広まっている。これは世界が右傾化しているというより、この先行き不安な世界で、「自分がいま不幸なのはあいつのせい」と気に入らない人、物、事を単純化して指さし、攻撃することだけが自分を守る、という世界の不安が曲がった形で凝縮したものだ。
 
アラブ系衛星テレビ局、アル・ジャジーラのアンカーマンはアメリカ人に向けて「これで我々の気持ちが分かっただろう、アメリカよ。今あなた方はもろく、不安定な気持ちでいっぱいだ。独裁者をいただく政府を持つ人々をあなた方は覇権国家として自ら攻撃してきた。その反対側になった時の気持ちがこれだ。」という「世界へようこそ、アメリカ」というモノローグを公開した。彼らの言葉を借りれば「世界へよこうそ、グレート・ブリテン」「世界へようこそ、おフランス」といったところだろう。

Text : Ryoko Tsukada

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