ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督を徹底解剖!
2017/10/30(月)
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デヴィッド・リンチの『砂の惑星』。

おまけ

『ブレードランナー2049』の次は?

長編9作目となる『ブレードランナー2049』は、先述したヴィルヌーヴが過去作品で描いてきたことや演出から判るように、彼の集大成的な意味合いもある。そしてそれらの要素は、ヴィルヌーヴが続編の監督として適任であることも裏付けるのである。
 
小説では、1995年に発表された「ブレードランナー2 レプリカントの墓標」という続編が存在するが、『ブレードランナー2049』とは全く異なるストーリーになっている。また今回、『ブレードランナー2049』の内容を補完するものとして、前日譚にあたる短編が3本製作されている。そのうちの1本、『ブレードランナー ブラックアウト2022』では、大停電がその後の世界に大きな影響を及ぼしたことを示唆。この設定を基に、『ブレードランナー2049』の劇中では「大停電で多くのデータが破損、残ったのは紙で記録されたものだけ」と語られている。電子化という現代社会に対する批評性は、『ブレードランナー』の描いた社会に対する先見性を継承したものだと理解できる。
 
また予告編からも判るように、未来のロサンゼルスに今回降り注ぐのは<雨>だけではない。そして、海岸にはなぜか巨壁が築かれている。これらの設定は、劇中で明確に説明されない。だが、心配する必要は無い。『ブレードランナー』公開当時も、様々な設定が明確に説明されないからこそ議論を呼び、何度も繰り返し観ることで新たな発見があったのだ。『ブレードランナー2049』にも同様の魅力があることは間違いない。
 
最後にドゥニ・ヴィルヌーヴの次回作を御紹介。彼の新作は、かつてデヴィッド・リンチ監督が映画化した『砂の惑星』(84)のリメイクだとアナウンスされている。『砂の惑星』はアレハンドロ・ホドロフスキーが頓挫した作品としても知られている(その経緯はドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』に詳しい)。後にリドリー・スコットも『砂の惑星』の映画化に参加。結果的に『砂の惑星』を降板したことが、『ブレードランナー』を監督することに繋がったという経緯もあるのだ。
 
つまり、ドゥニ・ヴィルヌーヴは、『砂の惑星』を映画化することで、将来的にデヴィッド・リンチやリドリー・スコットといった独自の映像を作り出す世界的な映画監督たちと並ぶことになるのである。

text: Takeo Matsuzaki photo: AFLO

  • ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
    今ハリウッドで最も期待されているカナダ出身の映画監督。アカデミー外国語映画賞候補となった『灼熱の魂』(10)が日本で紹介されて以来、新作が公開される度に映画ファンの注目を浴びる。今年公開された『メッセージ』(16)では、遂にアカデミー作品賞や監督賞の候補に。今年の映画界最大の話題作の1本、『ブレードランナー2049』が公開中。

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

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