ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督を徹底解剖!
2017/10/30(月)
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世界に知名度を高めた衝撃作

『灼熱の魂』(10)

ドゥニ・ヴィルヌーヴの作品が日本でも注目され、知名度を高めたのは長編4作目の『灼熱の魂』(10)からである。映画全編に流れるレディオヘッドの「You and Whose Army」も印象的なこの映画は、アカデミー賞で外国語映画賞候補となり、多くの国際映画祭でも絶賛された作品。母の遺言によって父親と兄を探し出し、其々に宛てた手紙を渡す旅に出る双子の姉弟の物語。映画史に残るほど絶望的かつ感動的なラストに衝撃を受ける作品でもある。
 
ネタバレなので詳しく解説できないのが残念だが、この映画の描く<生と死>や<命>、あるいは<贖罪>に対する考え方は、『ブレードランナー2049』に繋がるものがある。ヴィルヌーヴ監督が続編へ起用された理由に、『プリズナーズ』(13)や『メッセージ』の成功を挙げることが多い。しかし、彼の紡ぎ出す物語や演出という面において、ヴィルヌーヴの初期作品は『ブレードランナー』との親和性が高いことも窺える。
 
思い返せば、初公開時の『ブレードランナー』は「内容が難解」という理由から、デッカードのモノローグが付け加えられていた。そのことに不満を抱いていたリドリー・スコット監督は、後の「最終版」や「ファイナル・カット版」でハリソン・フォードが吹き込んだナレーションを全てカットしている。つまり、台詞で多くを語らないヴィルヌーヴの演出は、リドリー・スコットの意図したオリジナルの『ブレードランナー』と親和性があるといえるのだ。

text: Takeo Matsuzaki photo: AFLO

  • ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
    今ハリウッドで最も期待されているカナダ出身の映画監督。アカデミー外国語映画賞候補となった『灼熱の魂』(10)が日本で紹介されて以来、新作が公開される度に映画ファンの注目を浴びる。今年公開された『メッセージ』(16)では、遂にアカデミー作品賞や監督賞の候補に。今年の映画界最大の話題作の1本、『ブレードランナー2049』が公開中。

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

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