『ダンケルク』新しいスターを生み出してきた戦争映画に注目!
2017/09/07(木)
> <

5/7

『プライベート・ライアン』(98)

スティーブン・スピルバーグ監督が<ノルマンディ上陸作戦>を描いて、アカデミー監督賞に輝いた作品。マット・デイモン演じる二等兵“ライアン”を救出するため編成された、トム・ハンクス演じる大尉を中心とした8人の小部隊の面々。彼らの中にも、後にスターとなった人物がいる。
 
その筆頭が『ワイルド・スピード』シリーズのヴィン・ディーゼル。この映画では、“気は優しくて力持ち”という彼本来の魅力を感じさせる役を演じている。また後にドラマ「ブレイキング・バッド」でブレイクする、ブライアン・クランストンも小さな役で出演。
 
本作の主要キャストにはある共通点を指摘できる。それは役者であり製作側の人間でもあるという点。例えば主演のトム・ハンクス。当時彼は『すべてをあなたに』(96)で長編監督デビューを飾っていた。またマット・デイモンは、ブレイクのきっかけとなった『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)で親友のベン・アフレックと共にアカデミー脚本賞に輝いている。
 
さらにライベン役のエドワード・バーンズは、製作・監督・脚本・主演の自主映画『マクマレン兄弟』(95)でサンダンス映画祭審査員大賞を受賞して世に出たという経緯があった。メリッシュ役のアダム・ゴールドバーグは、『Scotch and Milk』(98)で監督デビューしていたなど、『プライベート・ライアン』では、映画製作の実績を持った人物を意図してキャスティングしているのである。
 
そしてあまり知られていないことだが、ヴィン・ディーゼルは短編映画の製作が評価されたことで注目されたという経歴がある。スピルバーグは当時のインタビューで、彼の短編監督作『Multi-Facial』(95)を観てキャスティングしたと語っている。ディーゼルもまた、本作出演以前の97年に『ストレイ・ドッグ』で製作・監督・脚本・主演を兼任している才人だったのである。

text: Takeo Matsuzaki photo: AFLO, GETTY IMAGES

  • 『ダンケルク』
    第二次世界大戦の真っ只中の1940年。ヒトラー率いるドイツ軍により、イギリスとフランスの連合軍兵士が、フランスの港町ダンケルクに追い詰められた。海岸に残された40万人もの兵士を救出するため、対岸のイギリスから民間の船舶も動員した<ダイナモ作戦>が展開される……。これまでも斬新な世界観で観る者を驚愕させてきたクリストファー・ノーラン監督が、実際に起きた救出作戦を、陸海空それぞれの視点で描いている。緊迫感と臨場感を創り出すことを意識したIMAXでの撮影。極力CGを使わない徹底した実物主義は、博物館から当時の駆逐艦を借りて撮影するなど細部にまでこだわりをみせる。本作は物語らしいものを排除し、極力台詞を削ぐなどすることで、観客がスクリーンの中で戦場そのものを体感するような作品になっている。

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へセレブコラム一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト