金曜日の毒母たちへvol.5―――ジャイド・バリモア、幼い娘を夢の道具にしたステージママ
天才子役にしてハリウッドに燦然と輝く成功を収めた女優ドリュー・バリモアを酒と薬物に染め、夜の世界に追いやったパーティママ、ジャイド・バリモア。その陰には母を失った空っぽな幼少期があった。
天才子役は夜のインビテーション
こうして週に何回も、母と天才子役の娘はLAの夜の街に繰り出した。ロックスターの誕生日パーティにソワレ、映画のプレミアに展覧会の前夜祭などなど。たとえインビテーションがなくても問題はなかった。ブロンドの天使のような姿をもつドリュー・バリモアはどんな場所でも「開けゴマ」の呪文と同じ。スタジオ54からVIPクラブのヘレナズまで、シルバーレイクだって、大スターの娘を思い切り着飾らせて、毛皮を羽織って入口まで行けばドアは開いた。ドリューはその可愛らしさや天性の愛想、いたずらっ子な一面などの魅力、そして朝の4時まで大人たちに付き合う根性で、どのテーブルにいっても大人たちに愛された。彼女の虜になった大人にはデミ・ムーアやメリッサ・ギルバート(「大草原の小さな家」)、エミリオ・エステベス(『ブレックファスト・クラブ』、チャーリー・シーンの兄)など枚挙に暇がない。それに深夜にたった9歳の少女がいても誰も驚かなかったし、指摘もしなかった。なぜなら、近くにはいつも保護者ジャイドがいたから。
ハリウッドにはそれまでもチャイルド・スターが伝統的に存在した。シャーリー・テンプル、ミッキー・ルーニー、ジュディ・ガーランドが子役スターの道を切り拓いていた。ドリューもそのレールに乗ったにすぎない。しかし、彼女のインタビューや著書に、ジャイドは都合よく解釈した話を物語り続けた。
(それまでの子役スターと違い)ドリューは自分で女優になりたがった。カメラの前でしか才能を発揮しない、と。つまりは、母と夜のパーティをはしごして、ハリウッドの住人に媚を売っている地道なプロモーション活動はなかったことにしたのだ。そしてドリューが天才的な女優の才能を授かったのは、偉大な俳優一家を祖先にもつDNAが創り、女優の才能をもっている自分が生みだしたもの。彼女に流れる血が見事な演技をさせるのだ、とも。