聖子と明菜どっちがお好き? ミレ二アル世代がハマる「昭和歌謡」
2018/05/01(火)
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若者の「お酒離れ」「クラブ離れ」が囁かれているなか、バーやクラブなどにいる大人たちから情報収集をすることもあるというふたり。この日もお酒を片手に音楽トークは尽きない模様。

ミレ二アルズから見た昭和歌謡②

歌謡曲が持つ「異世界」感と「アベンジャーズ」感が魅力

―ずばりおふたりは昭和歌謡のどこに魅力を感じますか?

須田:僕の昭和歌謡好きは、そもそも80年代の音楽が好きだというのが前提にあるとは思います。80年代ってシンセサイザーやリズムマシンといった新しい楽器が出始め、そこから音楽が大きく変わって行く時代だったんです。同じアーティストでも、関わっている人や使っている楽器が変わることで、どんどん音楽性が変わって行く。そうした変化を感じ取れるのが80年代の音楽の面白さだと思います。

そして昭和歌謡ならではの魅力としては、そもそも歌謡曲じゃないロックなどのフィールドで活躍されていたかたが、80年代に歌謡曲の作詞や作曲を手掛けるようになったということがあります。きっと彼らはお金のためじゃなく、歌謡曲という大衆に向けた音楽を純粋に良いものにしようと実験していた。そういう時代なんじゃないかと思うんです。僕はこんな妄想をしながら昭和歌謡を聴くわけですけど、そうした夢を感じられるのが昭和歌謡の魅力のひとつだと思いますね。

垣畑:私としては「時代感」がキーになっている気がします。昭和歌謡ってよくレトロなフレーズが出てくるじゃないですか。私の感覚からすると「それ何!?」みたいなキーワードが度々出てくる。多分ちょっと前だったらそれがダサかったんですけど、今は逆に魅力に感じる部分でもあります。エキゾチックで、レトロで、トレンディな「そのフレーズ、クサくていいね!」みたいな。まるで異世界の出来事みたいに感じている部分はあるかもしれないです。

1984年にリリースされた中森明菜の「北ウィング」は、康珍化が作詞し、林哲司が作曲・編曲を手掛けた。“愛はミステリー”“夢色の夜間飛行(ミッドナイトフライト)”など、ちょっとクサいフレーズも趣深い一曲。ちなみにタイトルの「北ウイング」は、成田国際空港(当時の呼称は新東京国際空港)の第1ターミナルで、日本航空の成田発アンカレッジ経由ロンドン・ヒースロー国際空港行きではないかと噂されている。

―須田さんは同じミュージシャンとしても、昭和歌謡に魅力を感じられる部分はありますか?

須田:基本的に分業ですべてが進んでいるのがおもしろいですね。70年代くらいまでは作詞と作曲それぞれに専門の“先生”がいたわけですけど、80年代になると自分自身がミュージシャンとして活動している人たちが集まるようになって来た。その人たちは自分で作詞作曲できるのに、歌謡曲の仕事ではあえて作詞だけ、もしくは作曲だけというかたちで参加したりするんです。ユーミン(※1) さんが曲を作って、そこに松本隆(※2) さんの歌詞がのる、松田聖子さん「赤いスイートピー」なんかがその好例ですが、そうそうたるミュージシャンが自分をぶつけ合っている感じがグッと来ますね。その人の個人のミュージシャンとしての作品では表れていない、新たな魅力を感じ取ることもできるのも歌謡曲の魅力だと思います。

ユーミンがペンネームである「呉田軽穂」で作曲を手掛けた「赤いスイートピー」。歌のなかの彼は“半年過ぎても”“手も握らない”ような人で、その超プラトニックな恋愛観が話題に。当時は赤のスイートピーは世に存在せず、作詞を手掛けた松本隆は“恋愛における幻”をテーマに書いた。この曲を境に同性ファンが増えたとも言われている。

―そうしたオールスター感はまるで『アベンジャーズ』みたいですね。

須田:あー!たしかに。僕は『アベンジャーズ』シリーズが大好きなんですけど、それとつながるかもしれないです(笑)。

―垣畑さんはレコード店のスタッフとして、昭和歌謡についてどう感じられますか?

垣畑:日本だけじゃなく海外でも注目が集まっていますね。最近は「和モノ」なんて呼ばれていますが、私が働いているお店でも和モノの7インチコーナーがすごく大きいんです。それだけ需要があるということですよね。そうした海外需要でも一番目立っているのは山下達郎さんですね。荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」もすごく値段が上がっています。100円で買えるレコードだと思っていた作品が、どんどん値段が上がっていますよ。

―山下達郎さんの人気の理由はどこにあるんでしょうか。

垣畑:アルバムとしてすごいものを作り上げているので、誰が聴いてもすごいとわかりやすいからじゃないかなと思いますね。それと今でも山下達郎名義で発表されている曲もたくさんあるので若い世代でも馴染みやすいのかも。

須田:“象徴”である人だと思います。YMO以降の時代における大きな音楽界のシンボル。自分自身では良い曲とはなんぞやということを純粋に求道者のように突き詰めつつ、歌謡曲という大衆音楽にも楽曲を積極的に提供し、プロデュースしていくというアプローチの幅広さも含めて本当にすごい。

  • (※1)松任谷由美。旧姓名および旧芸名は荒井 由実で、ほかアーティストへの作品提供の際には、本名のほか、呉田軽穂(くれだ かるほ)というペンネームを使用する場合も。夫はアレンジャー・松任谷正隆で、彼女の音楽プロデューサーを務める。1970・1980・1990・2000・2010年代と5つの年代10連続でアルバム売上首位を獲得(歴代1位)。毎年、苗場プリンスホテルでコンサートを開催していて、2018年2月に開催されたライブツアーで38年目に突入。

  • (※2)日本の作詞家、ミュージシャン。細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂らと結成したロックバンド「はっぴいえんど」の元ドラマー。同バンドの「12月の雨の日」から作詞をスタート。日本語で歌うロックを日本に定着させ、「赤いスイートピー」や「硝子の少年」など約400組に2100曲以上の歌詞を提供。アニメ『マクロスF』の挿入歌「星間飛行」も手掛けるなど、ジャンルは多岐に渡る。2017年、紫綬褒章を受章。

Photo: Nobuki Kawaharazaki Interview & Text: Kenta Terunuma Special Thanks: Spotlight Shinjuku

  • 須田洋次郎/1987年生まれ。2009年、東京にて結成した4人組のバンド「ミツメ」のドラムを担当。オーソドックスなバンド編成ながら、各々が自身のパートにとらわれずに自由な楽曲を発表。そのときの気分でいろいろなことにチャレンジすることがバンドのモットー。最新曲は「エスパー」。最近は国内のみならず、中国や台湾、韓国、ロサンゼルスなど海外でもツアーを開催し、「WWMM」と題した自主イベントも企画。DJや野球観戦、お菓子作りなど趣味も多彩。
    Instagram: @yoyooo_sd
    Twitter: @yojirooo

  • MAYU KAKIHATA(垣畑真由)/1995年生まれ。レコードショップ、「ディスクユニオン」で働きながらクリエイティブ活動・DJなど趣味を最大限に楽しんでいる22歳。高校生の頃に「ディスクユニオン」で働き始め、そこで培った音楽愛を活かし夏には自らマガジンを出版予定。
    Instagram: @kakihatamayu

  • ミツメ 最新シングル「エスパー」
    mitsume 
    7インチアナログ盤 ¥1,500
    CD ¥1,000
    http://mitsume.me/esper/

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