ミレ二アルズから見た昭和歌謡④
「時代劇」のノリで楽しむ昭和ミュージシャンの相関図
―ユーミンと中島みゆき(※1) もそうですが、音楽における“ライバル関係”というのは面白いですよね。
垣畑:しかも昭和歌謡だとそこに嫌味なことがないですからね。みんなで気楽に「どっち派?」って話ができる。
須田:大げさかもしれないけど、時代劇みたいな“リアルタイムじゃないからこその楽しさ”がありますね。良くも悪くも過剰な思い入れがないから、客観的に楽しめる。でもそこは歴史だから、大きな出来ごとがいっぱいあるっていう。
―よほどマニアじゃなければ、信長派か家康派かでケンカしないですからね。「バラード曲なら、聖子の『SWEET MEMORIES』と明菜の『難破船』どっちがいい?」みたいな。
垣畑:そんな感じですよね(笑)。「どっちかといえばこっち派」みたいな。過去にあったことですし。
―現代から見た 昭和歌謡は、アベンジャーズであり時代劇であるという、予想外の結論になりましたね(笑)。
須田:でも、感覚的にはそうだと思います。どっちの良さもわかるし、どっちも好きっていう。そして松田聖子さんと中森明菜さんは楽曲の提供元がすごすぎて「この曲はこの人の作品だったんだ」っていう楽しみかたや発見があるので、このおふたりは入り口としても良いかもしれないですね。
ミレニアル世代が語る昭和歌謡。おふたりの話を聞いていて印象的だったのは、リアルタイムではないからこその楽しみがあるということ。時代の風俗の違いによるエキゾチシズムやロマンチシズムはもちろんですが、さまざまな文献を参考に“今”というフィルターを通して自分なりに物語を構築・解釈できるという部分も、昭和歌謡の大きな魅力のひとつなのではないでしょうか。そしてそんな昭和歌謡の世界と歴史は、海外からの和モノ評価も含め、確実にこの2018年に連なる歴史として再定義され始めている。過去の音楽であり、今改めて構築されている音楽でもある。それが今の昭和歌謡なのかもしれません。
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(※1)松田聖子と中森明菜のように、松任谷由美と中島みゆきは同年代のシンガーソングライターとして正反対の存在であることから比較されることが多い。中島みゆきは、松田聖子と中森明菜の楽曲制作には関わっていないが、桜田淳子や工藤静香、柏原芳恵、郷ひろみなど、同年代のアーティストの作詞・作曲を多く手掛けた。2009年、化粧品のCMで松田聖子と中島みゆきが起用され、当時は見れなかった奇跡の組み合わせが話題に。
Photo: Nobuki Kawaharazaki Interview & Text: Kenta Terunuma Special Thanks: Spotlight Shinjuku
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須田洋次郎/1987年生まれ。2009年、東京にて結成した4人組のバンド「ミツメ」のドラムを担当。オーソドックスなバンド編成ながら、各々が自身のパートにとらわれずに自由な楽曲を発表。そのときの気分でいろいろなことにチャレンジすることがバンドのモットー。最新曲は「エスパー」。最近は国内のみならず、中国や台湾、韓国、ロサンゼルスなど海外でもツアーを開催し、「WWMM」と題した自主イベントも企画。DJや野球観戦、お菓子作りなど趣味も多彩。
Instagram: @yoyooo_sd
Twitter: @yojirooo -
MAYU KAKIHATA(垣畑真由)/1995年生まれ。レコードショップ、「ディスクユニオン」で働きながらクリエイティブ活動・DJなど趣味を最大限に楽しんでいる22歳。高校生の頃に「ディスクユニオン」で働き始め、そこで培った音楽愛を活かし夏には自らマガジンを出版予定。
Instagram: @kakihatamayu -
ミツメ 最新シングル「エスパー」
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