おまけ
ミレ二アルズが選ぶ、“今”好きな昭和歌謡
須田さんセレクト
真鍋ちえみ『不思議・少女』(1982年)
去年再発された真鍋ちえみさんの唯一のアルバムです。当時ファンからは受け入れられなかったという前衛的な作品なのですが、冒険心や探究心、音楽的な楽しみが詰まっていて、歌謡曲という括りを抜きにしても大好きな作品ですね。バンドの作業スペースでメンバーと一緒に聴いたりしています。再発盤ではきちんと解説やクレジットも載っているのですが、細野晴臣さんや阿久悠さん、矢野顕子さん、大貫妙子さんなど超豪華メンバーが参加している、それこそ“アベンジャーズ感”が詰まったアルバムではないでしょうか。そうそうたる面々が、当時発売されたばかりの最先端の楽器を使って、一曲ごとに何か新しいことできないかと試行錯誤しているのが伝わってくるのも楽しいです。
垣畑さんセレクト
ラ・ムー「Rainy Night Lady」(1988年)
菊池桃子さんがボーカルで、周りをフュージョンのプレイヤーが固めているというバンドの楽曲です。ラ・ム―のアルバム『THANKS GIVING』が再発売されるということで久しぶりに聴いたんですけど、これが結構シティポップ寄りというかフロアで使える感じですごく良いんです。これは次の「レコード・ストア・デイ」(世界同時開催されるレコードの祭典)で特に注目しているレコードですね。
ライター照沼さんセレクト
チューリップ「虹とスニーカーの頃」(1979年)
同じチューリップでも楽曲としては「私のアイドル」が好きですが、昭和歌謡として選ぶなら1979年作のこちら。ヒットすることを意識して作られ、見事にヒットしたという曲で、この絶妙な湿っぽさはまさに「昭和」。そして歌詞の面でも“わがままは男の罪/それを許さないのは女の罪/若かった何もかもが/あのスニーカーはもう捨てたかい”というサビを筆頭に、今ではまず出すことのできない雰囲気が充満しています。約40年も前の曲ですが、ここで歌われているのは失われた若き日の恋とその情景。そんな79年当時すでにノスタルジアを描いていたこの曲を、2018年にさらなる懐旧や憧憬も含めて聴く。そういった構図も含め、自分にとって魅力的な1曲です。
カルチャーエディターMセレクト
ハイ・ファイ・セット「冷たい雨」(1976年)
“カレ”と喧嘩して、キレられた彼女が「もうそろそろ許してくれるっしょ!」と思い、意気揚々と“カレ”の家に突然押しかけたら、なんと知らない女性と暮らし始めていたというドロドロの失恋ソング。主人公の彼女がどんな過ちをして“カレ”にキレられたのか、“カレ”もいつ頃から新しい女性に手を出し始めていたか詳細は藪のなかですが、今だったら「ゲス浮気」と簡単にひと言で片づけられてしまう話を美しい単語の並びや軽いタッチのメロディーで、珠玉のラブソングに昇華しているところに作詞・作曲を手掛けたユーミンのカリスマ性を感じます。また、その“カレ”に対する殺意も洗い流してくれるような山本潤子さんの透き通った歌声とイントロの雨音も心地良いです。
そのほかミレ二アルズがハマった昭和歌謡曲のプレイリストをApple Musicのエル公式アカウントで公開中! 今記事と合わせて聴いてみて。(1-5:須田さん、6-9:垣畑さん、10-12:ライター照沼さん、13-18:エディターMセレクト)
Photo: Nobuki Kawaharazaki Interview & Text: Kenta Terunuma Special Thanks: Spotlight Shinjuku
-
須田洋次郎/1987年生まれ。2009年、東京にて結成した4人組のバンド「ミツメ」のドラムを担当。オーソドックスなバンド編成ながら、各々が自身のパートにとらわれずに自由な楽曲を発表。そのときの気分でいろいろなことにチャレンジすることがバンドのモットー。最新曲は「エスパー」。最近は国内のみならず、中国や台湾、韓国、ロサンゼルスなど海外でもツアーを開催し、「WWMM」と題した自主イベントも企画。DJや野球観戦、お菓子作りなど趣味も多彩。
Instagram: @yoyooo_sd
Twitter: @yojirooo -
MAYU KAKIHATA(垣畑真由)/1995年生まれ。レコードショップ、「ディスクユニオン」で働きながらクリエイティブ活動・DJなど趣味を最大限に楽しんでいる22歳。高校生の頃に「ディスクユニオン」で働き始め、そこで培った音楽愛を活かし夏には自らマガジンを出版予定。
Instagram: @kakihatamayu -
ミツメ 最新シングル「エスパー」
mitsume
7インチアナログ盤 ¥1,500
CD ¥1,000
http://mitsume.me/esper/