聖子と明菜どっちがお好き? ミレ二アル世代がハマる「昭和歌謡」
2018/05/01(火)
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入店と同時に、レコードに興味津々。なかにはレアなアイテムもあったようで、「売ってはいないんですか?」と店主に尋ねるひと幕。

ミレ二アルズから見た昭和歌謡①

昭和歌謡の情報収集は、レコードとネットの併用が基本

―まずはじめに、おふたりが昭和歌謡と出会ったきっかけは?

須田:僕は1987年生まれで、昭和歌謡世代ではないんですけど、子供の頃に親が車でかけていたという記憶があります。ただ、中高生くらいの頃はリアルタイムの音楽を聴いていたので、特に昭和歌謡を聴いていたということはありませんでした。そのあと、バンドでカバーコンピに参加することになり、ほかのメンバーのセレクトで松田聖子さんの「制服」(※1) をカバーしたのが改めて昭和歌謡に触れるきっかけになったと思います。そこからいろんな楽曲の作詞作曲クレジットを調べるうちに、YMO(※2) 人脈が関わっているなどの発見があり、興味を持ち始めました。

垣畑:私は親も洋楽を聴いているような家庭で育ったので、高校生くらいまでは日本語の曲を毛嫌いしていたくらいでした。でも17歳でボストンに留学したときに日本語が恋しくなって、iPodに入っていた唯一の日本語曲だったスピッツを聴いたんです。そこで日本語の曲の素晴らしさに気づきましたね。

1983年年にリリースされた中森明菜の「禁区」は、売野雅勇が作詞し、YMOの細野晴臣が作曲を手掛けたテクノ歌謡。同曲のB面として発表された「雨のレクイエム」の制作陣も豪華で、芹沢類が作詞し、ブレイク直前にあった安全地帯の玉置浩二が作曲を担当。

サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のような曲を作って欲しいと、当時のプロデューサーが作曲の細野晴臣に依頼し、出来上がった1983年にリリースされたバラード曲。作詞は「はっぴいえんど」のドラマーで、聖子の作品を多く手掛ける松本隆。

―スピッツから昭和歌謡に行くきっかけは?

垣畑:多分「ディスクユニオン」の店頭で誰かがかけていたんだと思います。仕事をしているだけで新しい音楽の情報がどんどん入ってくるので、やっぱりディスクユニオンで働いているというのは大きいですね。そこからレコードも買い始めるようになって、山下達郎(※3) さんを始めとするシティポップの存在をあとから知って「やばい、これは見落としてた!」といろいろ聴くようになりました。

―昭和歌謡のような昔の音楽について、どのようにして情報を仕入れていきましたか?

須田:僕が昭和歌謡に興味を持ち始めた頃は、まだApple Musicなどのストリーミングサービスもありませんでした。だからレコード屋さんに行って、たくさんあるレコードのなかから何枚かを選んで買って聴いていました。でも、当時のレコードってクレジットの情報量が少なくて、誰がどんな仕事をしているのか何も分からないことが多いんですよ(笑)。だから「レコードで聴いて、クレジットはネットで調べる」というパターンが多かったですね。そうした情報を次に聴く作品を選ぶ参考にしていました。

垣畑:私は歌謡曲に限らずディスクガイドが好きなので、昭和歌謡についても当時リアルタイムで発売されていたような古いディスクガイドを買って読んでいました。ほかには音楽に詳しいかたが集まるバーで教えてもらうこともあります。もちろん最近はYouTubeやApple Musicといったネットの力も使っています。

―須田さんはディスクガイドを読んだりはしませんでしたか?

須田:ディスクガイドというよりも、当時の物語が綴られたドキュメンタリー的な本を見たり。『松田聖子と中森明菜』(※4) という本も読みました。昭和歌謡にはいろんな人が関わっていたこともあり、たくさんの物語があるのもまた魅力的なんです。

  • (※1)1982年にリリースされたシングル「赤いスイートピー」のB面が「制服」。作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂。呉田軽穂は、ユーミン(松任谷由美)がほかのアーティストに楽曲を提供する際に使用する別名義。当時、“ぶりっ子”として揶揄されることの多かった松田聖子の女性ファンを開拓したいという願いから、女子大生やバリキャリOLの教祖であったユーミンに作詞を依頼したという噂もある一曲。

  • (※2)1978年に坂本龍一、高橋幸宏、細野晴臣の3人で結成したグループ、イエロー・マジック・オーケストラ。結成当初は横尾忠則をYMOのメンバーに加える構想もあったそう。シンセサイザーのサウンド、そしてコンピュータ制御の電子楽器による自動演奏を大々的に音楽に取り入れた先駆者的存在で、海外での評価も高く、それぞれのソロやほかグループでの活躍も華々しい解散や再生を繰り返しながら現在もグループ活動中。

  • (※3)日本のシンガーソングライター、ミュージシャン。レコーディングではボーカル・バックコーラスのほか、編曲からギター、コンピューターの打ち込み、シンセサイザー、パーカッションまで1人で手掛ける。自身の作品制作の傍ら、アーティストへ積極的に楽曲提供をしていて、「ハイティーン・ブギ」や「硝子の少年」、「ジェットコースター・ロマンス」など、ジャニーズのヒット曲にも多く携わる。テレビに出演しないことも有名で、公の場で話すのはライブやラジオ、雑誌のみ。

  • 『松田聖子と中森明菜 一九八〇年代の革命 』(朝日文庫、中川右介著) 。アイドルを演じた松田聖子とアーティスト肌の中森明菜。商業主義をシビアに貫くレコード会社や芸能プロの思惑が蠢く芸能界で、ふたりはいかにして生き延びたのか? 当時最前線の作詞家・作曲家が彼女たちに触発されて生み出した作品を論じ、ふたりの闘いのドラマを描いた本。

Photo: Nobuki Kawaharazaki Interview & Text: Kenta Terunuma Special Thanks: Spotlight Shinjuku

  • 須田洋次郎/1987年生まれ。2009年、東京にて結成した4人組のバンド「ミツメ」のドラムを担当。オーソドックスなバンド編成ながら、各々が自身のパートにとらわれずに自由な楽曲を発表。そのときの気分でいろいろなことにチャレンジすることがバンドのモットー。最新曲は「エスパー」。最近は国内のみならず、中国や台湾、韓国、ロサンゼルスなど海外でもツアーを開催し、「WWMM」と題した自主イベントも企画。DJや野球観戦、お菓子作りなど趣味も多彩。
    Instagram: @yoyooo_sd
    Twitter: @yojirooo

  • MAYU KAKIHATA(垣畑真由)/1995年生まれ。レコードショップ、「ディスクユニオン」で働きながらクリエイティブ活動・DJなど趣味を最大限に楽しんでいる22歳。高校生の頃に「ディスクユニオン」で働き始め、そこで培った音楽愛を活かし夏には自らマガジンを出版予定。
    Instagram: @kakihatamayu

  • ミツメ 最新シングル「エスパー」
    mitsume 
    7インチアナログ盤 ¥1,500
    CD ¥1,000
    http://mitsume.me/esper/

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