ミシェル・オバマが、ファッションで本当に伝えたかったメッセージとは?
2017/01/19(木)
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アメリカのデザイナーが素晴らしい才能をもっているということ

ナイーム・カーン(ファッションデザイナー)

「僕が初めてミシェル・オバマのために手掛けた衣装は、彼女がインドでの公式晩餐会で着たものだった。その依頼がきたとき、“自分はだれか、ファッションの世界で自分はいままでどのような道を辿ってきたのか”と自問自答してみたよ。あのドレスにはいろいろな情報が詰まっているのさ。例えば、とてもシンプルでクリーンなストラップレスのスタイルにしたのはそれがとてもアメリカンだと感じたから。僕が『ホルストン』で働いていた頃、ストラップレスというのはとてもクリーンでアメリカンなスタイルだったからね。ドレスのプリントのインスピレーションになったのはウォーホル。『ホルストン』で働いていた頃によくウォーホルと仕事をしていた。一度『ホルストン』に頼まれてポピーの花を描いたことがあったのだけれど、そのときに後ろから筆を導いてくれていたのがウォーホルだった。そのときのプリントがもとになっているんだ。
 
ドレスを制作するにあたって次に思ったのが、刺しゅうを通して歴史を感じさせるにはどうしたらいいかということ。僕の祖父はインドの王室のために刺しゅうを施していたからね。そのときに使用していたスパンコールのなかに、24金を手で打ち延ばして作られていたものがあったんだけど、僕はそれと同じ手法を使おうと思い立ち、銀メッキのスパンコールをドレスに埋め込んでダイヤに見立てたんだ。
 
その頃はまだ、オバマが大統領に成り立ての頃で、細かい寸法の提供や仮縫いの機会が無かったんだ。だからドレスのコルセットのサイズを調整できるようにしたのさ。生地には伸縮性の高いチュールを使用し、身体にぴったり付くようにした。あれだけ考えてデザインしたドレスはいままでに無いよ。あのドレスには僕の人生のすべてが詰まっているんだ。僕にとってとても意味のある作品だよ。
 
ミシェルがこのドレスを気に入ってくれたそのおかげで、細かい寸法なども量らせてもらえるようになり、もっとカジュアルな付き合いになったよ。もちろん、彼女のことをもっと知ることで、デザインに活かせるアイデアも増えていったしね。ファーストレディは、とてもやさしくて温かい心の持ち主だよ。彼女と接しているとまるで家族の一員になった気分になれる。会ったら必ず初めにやさしくて心温かいハグをしてくれるからね。それで僕は彼女のためならなんでもしてあげたいという気持ちになるのさ。彼女のハグはとても誠実で、策略だとは一切感じなかった。自分の人生を捧げてもいいほど素敵な女性だと思いながら、よくホワイトハウスを後にしていたよ。
 
僕はファッション業界をとても大事に思っているんだけど、ファーストレディも同じく業界にとても気を遣っていてくれていたよ。彼女はよく僕に、『デザイナー全員の洋服を着なくちゃ』と言っていた。彼女にとってそれはとても重要なことだった。僕の名前も彼女のおかげで世界中に知れ渡ることになったからね。ヨーロッパ人デザイナーは常に自分たちの国の代表として活動をしているけれど、オバマ夫人はその機会をアメリカ人デザイナーにも与えてくれた。彼女はファッション業界のためになることをたくさんしてくれたよ。決してただおめかしをしていただけではない。
 
オバマ夫人はファーストレディという役割を深い誠実さと共に務め切ったと思うよ。彼女はアメリカを代表するほどの上品さと気品の持ち主だと僕は思っている。僕は政治家ではなく、ファッションデザイナーだけど、はっきりした視点をもっているし、忠誠心もある。この国が掲げる価値観を大切に思っているからこそ、新しい政権には不満を感じている。どう反応していいかはまだはっきりわからない。でも期待は一切していないし、この国が向かおうとしている方向に不安を感じているのは確かだね」

ナイーム・カーン(Naeem Khan)

Interview & Text: Leah Chernikoff, Nikki Ogunnaike  Translation: Rendezvous Photo: GETTY IMAGES

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