2008年6月3日、当時上院議員だったバラク・オバマとミシェル・オバマ(ドレス:マリア・ピント、ベルト:アライア)。ミネソタ州セントポールで行われたこの選挙決起大会でオバマの民主党指名が決定した。
女性らしい服を着ながら、強いイメージを貫けるということ
マリア・ピント(ファッションデザイナー)
「私がミシェルと出会ったのは、バラクが上院議員になったとき。共通の知人の紹介で、ミシェルは宣誓式のときに私がデザインしたスーツを着たの。とても感じの良い、丁寧な顧客だったわ。上院議員の妻、そしてシカゴで生まれ育った女性だった彼女が、シカゴ州選出の上院議員の妻から大統領選候補者の妻になるにつれて、どのような要求にも対応できるように、次に行くのがアイオワ州なのかニューヨークなのかとか、それぞれのシチュエーションにどのような服装がもっとも適するのかをとても考えたわ。
いちばん印象に残っているのが、大統領候補の指名が決定した日にバラク(・オバマ)がミシェルとしたフィストバンプ。そのとき、彼女が着ていたのは私がデザインしたパープルのシースドレス(※)なの」 (※身体にぴったり沿った細長いシルエットのドレスのこと)
「でも、このほかにも思い出はたくさん。人気司会者のオプラ・ウィンフリーがサンタ・バーバラで開いた資金集めのイベントでは、とても興奮したのを覚えている。出席するミシェルのためにすてきなドレスを作ったの。オプラがバラクを紹介した後、バラクがミシェルを紹介する際に、「ファーストレディは今日とても輝いている。彼女のドレスのデザイナーもここに来ています」と言って私の名前を言ったの。思わず椅子から転げ落ちそうになったわ。私の名前をその場で言う気配りに感動したの。バラクとミシェルのふたりは、とても思いやりのある人たちだわ。
ミシェルの功績は素晴らしいと思う。最初の頃から一流ブランドと庶民的なブランドをミックスすることが、人々にとても良いメッセージを与えた。私が着るように勧めたスリーブレスのシースドレスは、腕を露出することが世間に受け入れられるきっかけとなったの。ミシェルがノースリーブを着る前は、テレビでニュースキャスターがノースリーブを着ることは許されていなかった。ミシェルがこのようにファッションに与えたちょっとした影響は計り知れないわ。あともう一つ彼女が成し遂げたことは、どうやったら女性らしい服装をしながら強いイメージを貫けるかを例証したこと。その良い例がシースドレスね。今ではより多くの女性が会社の重役を務めているわ。ほかの人と対等の立場に立ったり真剣に話しを聞いてもらうためには、男性の格好を真似しなくてもオッケーということを示してくれたの」
マリア・ピント(Maria Pinto)
Interview & Text: Leah Chernikoff, Nikki Ogunnaike Translation: Rendezvous Photo: GETTY IMAGES