aggiiiiiii's EYE
ヌーヴェルヴァーグの主人公ふたりに、世界はこう見えるのだ!
高校生のある夏、キャンプに出かけたときのこと。山の頂上で Y 子と並んで M 君に写真を撮ってもらったのだけれど、現像されたもの(当時はまだフィルムの時代である)を見て驚いた。二人しか写っていないのに、フレームの中央にはまっすぐに Y 子が据えられ、わたしは完全に添えモノのように端に追いやられていたのだ。そのとき M 君の Y 子に対する気持ちに気がついたし、「ああ、彼には世界がこのように見えているのだなあ」とおもしろく思った(M 君にそれほど興味がなかったゆえの余裕)。
で、ゴダールとカリーナである。恋愛関係のまっただなかに撮影された『女は女である』の「子どもがほしいの。24時間以内に」上目づかいをパチパチさせるシーンを例にあげずとも、ゴダールのフィルターを通して観るカリーナのかわいらしさはもう天井知らず、最上級のレベルだ。『はなればなれに』で主役の三人がダンスを踊るシーンなど、正直カリーナしか目に入ってこない。あとの二人はおまけである。ゴダールにはきっと世界がそのように見えていて、カリーナはだれよりも自分の魅力を知る人に最高の瞬間を撮ってもらっている。そう、そこにあるのはしあわせの Win-Win だ。そんな関係からうまれた作品は、なぜだか他人の目から見てもとても興味深い。ほら、最近では夫さんが撮る安達祐実の写真が話題になったように。
文・選 aggiiiiiii(ジン『KAZAK』編集、発行人)
Photo: AFLO、GETTY IMAGES
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aggiiiiiii
アギージン『KAZAK』編集、発行人。写真家コリーヌ・デイのファンジンや、ソフィア・コッポラ監督作『ブリングリング』のオフィシャルファンジン、「わたしたち世代のフェミニズム」などをテーマに発行している。http://kazakmagazine.blogspot.jp/ -
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