●仕事は自らを成長させてくれる
-最後に、これから働く人、今働き始めた人にアドバイスをください。
私は自分が18歳から働きつづけてきて、本当に良かったと思っています。人が“自立”して、自分の世界をしっかり持つために、仕事は良い機会をたくさん与えてくれます。
そして、仕事をしていると、思いもかけない人との出会いがたくさんあります。人は人によってしか磨かれない。人は人によってしか育てられないと思っています。本を読んだり、勉強のツールはいろいろあるけれども、一番深く学ぶことができるのは、人との出会いによってではないでしょうか。
それから、働く上では、我慢も必要になってきます。どんな仕事でも多かれ少なかれ、相手に寄り添っていかなければ相手の理解も得られない。人に対する思いやり、人の痛みがわかることが大事です。人が生きていく意味は、人を幸せにすることによって自分も幸せになることだと私は思っています。人のために尽くすことで、自分も人に幸せにしてもらう。社会はそうして成り立っています。働くことで仲間もできます。それは本当に素晴らしいことです。
でも、仕事の場で生身になってなんでもぶつけてしまってはうまくいかない。そこには知性も理性も必要です。まず、相手を受け止めていく。価値観も全然違うのだから、歩み寄るのはとても難しいけれど。
-自分とまったく違う存在ですからね。
働いて社会的な繋がりをつくっていくことは、家庭や地域での関係づくりでもたいへん役に立ちます。もちろん、全員が必ず働かなければいけないということではありません。ただ、私は何らかの形で社会とかかわりを持って欲しいと思います。
だから、女性の皆さんには迷わず、やりたいことにチャレンジして欲しい。やってみてダメならやめればいい。何もしないうちにすくむことはないのです。そのために行政は働く方の環境づくりを進めているし、国を挙げて取り組んでいるので、どうか心配しないでまずはチャレンジしていただきたいというのが私の思いです。
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林文子(はやし・ふみこ)
横浜市長。1946年5月5日、東京生まれ。1965年、東京都立青山高等学校卒業後、東洋レーヨンなどでの勤務を経て自動車会社の営業に転職。その後、驚異の実績を誇る“営業マン”として活躍。企業トップとなり、BMW、フォルクスワーゲン、日産自動車を立て直した手腕のため日本の経済界だけでなく、世界中から注目される女性となる。その実績をもとに2009年、横浜市の市長に就任。今年、2013年、“待機児童0”の目標を達成した。
1965~1976年 東洋レーヨン株式会社(現東レ)、松下電器産業株式会社(現パナソニック) 等 勤務
1977年 ホンダオート横浜株式会社 入社後 ホンダクリオ神奈川北株式会社に転じる
1987年 BMW株式会社東京事業部(現BMW東京)入社
1993年 BMW東京株式会社 新宿支店長
1998年 同社 中央支店長
1999年 ファーレン東京株式会社(現フォルクスワーゲンジャパン販売株式会社)代表取締役社長
2003年 BMW東京株式会社 代表取締役社長
2005年 株式会社ダイエー 代表取締役会長 兼 CEO
2007年 同社 取締役副会長
2008年 日産自動車株式会社 執行役員
2008年 東京日産自動車販売株式会社 代表取締役社長
2009年 横浜市長
主な役職第30次地方制度調査会臨時委員
東京女学館大学 客員教授
受賞歴2004年 ウォールストリートジャーナル紙「注目すべき世界の女性経営者50人」選出
2005年 米フォーブス誌「世界で最も影響力のある女性100人」選出
米フォーチュン誌「米国外のビジネス界最強の女性」選出
2006年 日経ウーマン誌「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2006」キャリアクリエイト部門1位
ハーバードビジネススクール女性経営者賞 受賞
2008年 米フォーチュン誌「世界ビジネス界で最強の女性50人」選出