Episode3
ドランと僕の共通点、それはフェミニンな感性
「ドランは女優に対する思い入れが強い。そのことは、彼の映画を観た人ならご存知ですよね。一方、今までドランは男優との関係性をうまく築けないところがあった。でも、僕はとてもシンプルに関係を築くことができたし、現場で何の問題もなかった。彼はとても感受性が豊かな人だし、フェミニンな感性の持ち主なのかな。一方、俳優には自分を表現したいというエゴがあり、それは演技にとっては最大の敵。とりわけ、男という生き物はエゴを完全になくすことがなかなか出来ないし、支配的になりがちです。男と男の関係というのは、力関係が難しくなることがあるけれど、僕はそういうのはまったく意味がないと思う。ドランは、俗に言えば、女性的な直感が強い人。ルイも女性的なところのある人物だし、僕自身も少し似ているかも。ルイは自分からはほとんど話さず、人の話を聞いてリアクションをする。今回は1時間半の間、家族の恨みつらみを聞く役なんです(笑) 。家族が感情をぶつけ合うことで映画が動くんですが、そのなかでルイは沈黙を貫く。ルイは、観客が自分の家族関係などを投影するための、鏡のような存在かもしれません。
ドランとは、セリフなしでどう感情表現をするかを話し合いました。それを最大限に生かすのが、沈黙であり、ため息なんです。沈黙とは現代においては貴重なもの。内省的になるし、特権的なものでもあると思いますね。ルイ以外の家族は、ののしり合うことによって、自分と向き合うことの恐怖から逃げているんです。自分自身と本気で向き合ったら、深い淵に落ち込んでしまうことを無意識のうちに自覚している。それは現代の若者の姿でもある。沈黙に耐えられず、いろんな言葉や音のなかに自分を埋没させてしまう人が多い。自分と向き合うことを避けているんですね」
Interview: AYAKO ISHIZU
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ギャスパー・ウリエル
1984年生まれ。両親はデザイナー。『ジェヴォータンの獣』(’01)でデビューし、『かげろう』(’03)で脚光を浴び、以降、フランスの実力派若手スターとして君臨。今年はリリー・ローズ・デップと共演する「ダンサー(原題)」も公開予定。 -
『たかが世界の終わり』
自分の死期を告げるため、12年ぶりに帰郷したルイ(ギャスパー)。母(ナタリー・バイ)や妹(レア・セドゥ)は喜ぶものの、兄(ヴァンサン・カッセル)やその妻(マリオン・コティヤール)とは互いの距離を埋められぬまま時が流れ、ついに家族の感情が爆発する。2月11日より、新宿武蔵野館ほかで公開。http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/ -
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