インタビュー
2015/09/16(水)

パリで活躍する日本人 【vol.2 「Dersou」関根 拓さん】

パリのフード業界で活躍する日本人の方々に、パリ移住のきっかけから日本人としてパリで働くコツ、お気に入りアドレスまでを聞くスペシャルインタビュー。vol.2は、「アラン・デュカス」など名だたるレストランで腕を磨き、昨年パリに「Dersou」をオープンさせたシェフの関根 拓さんが登場。

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この日のメインメニューは「小鳩のロースト リュバーブのコンポート ビーツ ナスターチューム」。ジン、ベルモット、スモークティー、シトロン、炭のカクテルとともに。

その場にコミットして、自分の“肉”にできるかどうか

―日本人ならではの表現方法など、特に意識していることはありますか?
日本人というポイントは特に意識はしていませんが、「常に自分らしくあれ」と思っています。よく「日本人だからこうやる」とか「人がこうやっているから、うちではこのようにして差をつけています」と言う人もいますが、僕はそういったことには興味はありませんね。自分自身に正直になればおいしい料理が作れるかどうかはわからないけれど、少なくとも自分なりにおいしいものを追求しよう、というスタンスで料理すればいいんじゃないかと思っています。
 
「日本人だから」という姿勢よりは、パリの人たちが「関根 拓っていう人間がいる」と知って「何をやっているんだろう?」と興味をもって店に来てくれて、それから「あなたは何人なの?」と聞いてくれるような土台ができていることが大切。フランス人はおいしくて評判がよかったら、足を運ぶことを決して躊躇しません。特に自分は食事という文化を通して表現したいことがたくさんあるし、「こんなものを食べて欲しい、見て欲しい」という強い気持ちがあって、そういうものの現れが器だったりするんですよ。そもそも「日本人だからこうする」っていう方法論はもっていないかもしれないし、考えたこともないですね。
 
―パリでお仕事を始めたばかりのころ、大変だったことはありますか?
もちろんありましたよ。お金がないとか、寝られないとか……。当時は働く時間がとても長くて、休日が2日間あっても、そのうちの1日は寝てばかりだったりしましたよ。あとは、なにか注意を受けたときに「言葉が本当の意味でちゃんとわかっていないから、言われてしまうのかな?」と思ったりもしました。最初の頃はわからないことがたくさんあって、ひたすら仕事がキツかった。それでも仕事を辞めようと思ったことは一度もありません。侮辱されたときには「キツイなぁー」と思ったけれど、あの状況においては、自分は上の人が苛立つようなキャパシティしかもち合わせていなかったんだと、今では納得できます。だけど、その瞬間は自分ではMAXでやっていたつもりだったので、3つ星で働いていたときには悔しくて調理場で思いっきり泣いてしまったことが2回くらいありました。さすがにそういうときには、ちょっと引きずりましたね。
 
―日本人がパリで仕事をしていくコツはありますか? 
やはり、コミュニケーションだと思います。レストランのように多くの人と一緒に働く仕事場では、コミュニケーション力は欠かせないと思います。たとえ料理がうまくても、コミュニケーションができなかったらシェフとしていちばんいい材料を仕入れることもできない。「じゃあ、通訳をつければいい」という問題じゃなくて、その人自身が話すことが大切だし、もしも満足いかないことがあったら言葉で話してフィードバックするべき。そのときに出てくるものって、その人の自然な言葉だから、フランス語にせよ英語にせよ、コミュニケーション能力というのは絶対に必要だと思います。
 
あとは、社交性。当然キャラクターはいろいろとあるかもしれないけれど、とにかく輪の中に入っていくことによってわかることもあるので、それを怖がらないということです。「自分は何もできないから」と臆する人もいますが、できないことが問題なのではなくて、できないと思って輪に加わろうとしないことがよくないんです。強いキャラクターでもいいし、弱い性格でもいいけれど、そこに馴染んでいける社交性が大切。
 
フランスに来て星付きレストランで働き、そのトップにいけばいい料理人になれるっていう考え方は、噓ではないけどすべてではないと思うんですよ。東京には外国人は少ないのでこういったパターンはなかなかないかもしれませんが、もしもパリでやっていくとしたら、仕事場でも仕事の外でも、フランス人や世界中の人間も含めて、いろいろな場所にコミットして、それを自分の“肉”にできるかどうかということがとても大切です。

  • 関根 拓/1980年、神奈川県生まれ。大学卒業後、イタリア料理店でのアルバイトなどを経て、「ベージュ アラン・デュカス 東京」に立ち上げから3年半勤務したのちに渡仏。パリの「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」で腕を磨き、2つ星レストラン「エレン・ダローズ」ではスーシェフに。2014年11月、パリ12区にオーナーシェフを務めるレストラン「Dersou」をオープン。1品ごとにカクテルをペアリングしたコースメニューが話題を呼び、パリのレストラン業界を席巻中。
     
    「Dersou」
    http://www.dersouparis.com/
    https://www.facebook.com/dersouparis
    21 rue Saint Nicolas 75012 Paris
    +33 9 81 01 1273
    email : info@dersouparis.com

photo : Koji Hirano  coordination & text : Masae Hara

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