自分の欲望を知って、正直になること

自分の欲望が何となくわかってはいても、人はなかなか大胆になれません。好きになった相手だからこそ、みっともない自分を見せるのは恥ずかしいこと。そして恥ずかしいからこそ自我が壊されていって、それが快感だという矛盾。自我が壊される恐怖。
 
前回、邦画『紙の月』評で「女性は、男性社会から侮辱されている」と書きましたが、男たちは男性社会のなかで“男であろう”とし続けて疲れています。だから仮面をはがされたがるMな男性が増えている。一方で「あたしMなの～」と自称する女の子も増えてますが、その多くは「いじめられたい」わけじゃなくて「かまってほしい」だけですよね。男性も女性も自分勝手です。仕方ありません、どっちも疲れているんだから（笑）。
 
そんな時代に、欲望のマッチングでくれぐれも気をつけていただきたいのは、当たり前ですが、お相手をちゃんと選ぶことです。変態きどりで自称Sの、ただ支配したいだけのモラハラ男・DV男に引っかかりませんように。男の“悪い変態”はパートナーが望んでいない行為をしたがる奴です。そういう奴こそ仮面をはがされて、女性の前にひざまずけばラクになれるのにね。虐待されたり遊ばれたりしているのに、それを「かまってもらってる」状態だと勘違いして依存しちゃうのは、体にも心にも良くありません。健康的な変態を目指しましょう。
 
この映画でトマがマゾになれたのは、お芝居という設定があったからです。セックスって一種の演劇なんですよ。彼は社会で通用するように「自分はインテリで、アーティストだ」っていう顔をしていた。ところがワンダにその仮面をはがされて、気づいたら“マゾ”とか“女性”といった仮面をかぶせられ、いつの間にか自分でもそれを楽しんでいた。
 
まじめな女の人は、男の欲望に合わせるのが「女の幸せ」だと子供のころから教育されて、それが自分の欲望とイコールだと思ってしまっているケースもあるかもしれません。自分の隠された欲望を知るためには、変な映画を観たり不道徳な本を読んだりして感情を動かして、親や社会の影響下からいったん離れてみてもいいでしょう。
 
もしかしたら“あなた”のなかに、とんでもなく倒錯した性癖がひそんでいるかもしれない。男と女の役割を取り換えるセックスは、興味があるならぜひトライしてみていただきたいです。それを一緒に楽しんで恥ずかしがりながら興奮できる相手は、きっと、いいパートナーです。
 
■今回の格言 ／ セックスは「愛の行為」ではなく、あなたとパートナーとを癒すために二人で演じる「一種の演劇」です。試してみたい「自分の欲望」を知って、信頼できるパートナーを相手に、こっそり「ちょっと変なこと」を楽しんでみましょう。