特集 2016/11/11(金)
FROM ELLE WORLD

ヒラリー落選に未だ沈黙中。ビヨンセが政治へ傾倒していった8年間を分析

レディー・ガガやケイティ・ペリーなど、ヒラリー・クリントンの選挙選に力を注いだセレブは数多くいるが、なかでもビヨンセは別格。Jay-Zとともに、オバマ大統領時代から全面的なサポートを惜しまず、この8年間、生み出す作品の政治色もどんどん濃くなっていた。今年リリースしたアルバム『レモネード』のミュージックビデオやツアーは、黒人女性としてのアーティスティックな面で彼女の理解と功績の進化を支えている。そしてパフォーマーとしての彼女の進化と並行して、公の場でのビヨンセの政治的な行動も変化し、成熟していった。今回、ヒラリーが破れてしまったことで、数多くの民主党支持セレブが嘆きのツイートを行っていたが、投票から約2日経った11月11日現在も、ビヨンセは沈黙を貫いている。彼女がいかに政治に傾倒していったか、その変遷を確認しながら、次なるアクションを待ちたい。

「黒人の命が問題だ(Black Lives Matter)」:2016年
 
アメリカ大統領選が行われた2016年、ある土曜日の午後にビヨンセは「Formation」を発表した。彼女の社会に対するメッセージを根本的に改めて定義した作品である。新聞「ニューヨークタイムス」のジェナ・ウォータムはこうコメントしている。「彼女は今まで以上に私たちに知ってほしいと願っている。自分が今でも地に足をつけ、近所に住み、注意深く暮らしている人間であることを。スーパーボウルのような大イベントに出演しているけれど、自分の意見を持ち、それをみんなに伝えることを恐れていない、意見をアメリカや世界に知らせることを怖がっていない、ということを私たちに知らせたいのだと思う」。サタデー・ナイト・ライブでは「ビヨンセが黒人になった日」というコントを放送、ファンの多くがこのとき初めて彼女が黒人であることに気がつく、というジョークを披露している。(つまり、ビヨンセはこのとき初めて、人種を超えたスーパースターではなく、黒人アーティストとしての意見を表明したのである。)
 

 

ハリケーン・カトリーナ、ファーガソンでの抗議活動、黒人の政治活動の歴史を受け、ビヨンセは「黒人の命も問題だ」運動に参加することを表明した。そしてそれは今でも続いている。アルバム『レモネード』をリリースし音楽界を支配する一方で、ソーシャルメディア、公の場でのパフォーマンスや発言がすべてアフリカ系アメリカ人の政治的な地位向上を応援しているのは明らかである。
 
政治活動から抗議活動に至るまで、ビヨンセの市民意識は、彼女が自分の立場の新たな利用方法を生み出すのに伴って成熟していった。アメリカ国民はこの年の夏、2人の黒人、フィランド・キャスティルとアルトン・スターリングが射殺される様子がSNSで配信されたことに動揺することになる。ビヨンセはインスタグラムと自分のウェブサイトに声明を発表した。「立ち上がり“私たちを殺すのを止めて”と要求するかどうかは私たち次第なのです」と綴り、自分の地域の議員に働きかけるための方法や連絡先のリンクも貼った。ビヨンセのファンが議会に殺到し、このサイトは数日クラッシュしたほどである。
(政治活動から抗議活動に至るまで、ビヨンセの市民意識は、彼女が自分の立場の新たな利用方法を生み出すのに伴って成熟していったのである。)

 
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Translation & Text: Yoko Nagasaka  Photo: Getty Images

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