特集 2016/11/11(金)
FROM ELLE WORLD

ヒラリー落選に未だ沈黙中。ビヨンセが政治へ傾倒していった8年間を分析

レディー・ガガやケイティ・ペリーなど、ヒラリー・クリントンの選挙選に力を注いだセレブは数多くいるが、なかでもビヨンセは別格。Jay-Zとともに、オバマ大統領時代から全面的なサポートを惜しまず、この8年間、生み出す作品の政治色もどんどん濃くなっていた。今年リリースしたアルバム『レモネード』のミュージックビデオやツアーは、黒人女性としてのアーティスティックな面で彼女の理解と功績の進化を支えている。そしてパフォーマーとしての彼女の進化と並行して、公の場でのビヨンセの政治的な行動も変化し、成熟していった。今回、ヒラリーが破れてしまったことで、数多くの民主党支持セレブが嘆きのツイートを行っていたが、投票から約2日経った11月11日現在も、ビヨンセは沈黙を貫いている。彼女がいかに政治に傾倒していったか、その変遷を確認しながら、次なるアクションを待ちたい。

歴史の始まり:2009年
 
2009年1月20日、バラク・オバマ大統領は就任式直後の祝賀ダンスパーティネイバーフッドボールでミシェル・オバマ大統領夫人とファーストダンスを披露した。そのとき、歌を歌ったのがビヨンセ。エタ・ジェームズの名曲「At Last」を熱唱した。この曲は結婚式の定番曲で、新郎新婦がこの曲をファーストダンスのBGMに選んだならどんなに心の広い招待客でも思わず呆れてしまうくらいありきたり、ではある。でも就任式で歌うこの歌は、単なる甘い恋物語以上の意味を持っていた。黒人たちの困難に満ちた旅路がついにゴールに達したことを表現しているように聞こえた。ついにアメリカの有権者たちが黒人の大統領を選び、ついに類稀なる黒人女性がファーストレディになったのである。そしてついに黒人の一家がホワイトハウスで暮らすことになったのである。
 
ビヨンセの「At Last」は黒人の魂の中にある切なる願いに語りかけ、黒人には当たり前である二重意識—常に他者の目を通して自分自身を見る感覚、アメリカ人であり黒人であるという意識—を癒した。ついに黒人は同じアメリカ国民から監視され分析され、解決しなくてはいけない問題以上の存在として見られるようになった。公民権運動指導者のW.E.B. デュボイスが言う、面白がった蔑みと同情で観察される存在以上のものになったのである。アメリカが経済危機を経験するまっただなかオバマ大統領は就任した。つまりアフリカ系アメリカ人が問題から解決策になったのである。ビヨンセの市民意識の変化はアメリカで初めて黒人大統領が誕生したとき、彼女自身が歌うバラードと共に始まったのである。

 
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Translation & Text: Yoko Nagasaka  Photo: Getty Images

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