ジャンル別で発表! 映画ジャーナリストの2017年BEST映画【後編】
2017/11/28(火)
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ムーンライト』より (C)2016 A24 Distribution, LLC 

ママン映画BEST/高山亜紀さん

『ムーンライト』
マイアミでアフリカ系アメリカ人として生まれ、自分のアイデンティティを探し続ける男性の少年期、青年期、成人期を美しい映像と情感あふれる音楽で静かに描く。母親の育児放棄や同級生からのいじめなどの苦しい現実と、だからこそ輝いて見える憧れの人との思い出や大切な初恋。薬物のために子供を虐待してしまい、その後、悔恨の日々を送る母親の長い年月を演じたのはナオミ・ハリス。実はたった3日で撮影したそうだが、アカデミー賞助演女優賞ノミネートにふさわしい凄まじい演技を見せている。アフリカ系アメリカ人男性のセクシュアリティという限られた世界の話でありながら、誰もが心、動かされずにはいられない傑作。

『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
5歳で迷子になり、オーストラリア人の夫婦に引き取られて育ったインドの男の子が、25年後、グーグルアースを使って、本当の家族を探し当て、会いに行ったという衝撃の実話を映画化。第89回アカデミー賞では、作品賞を含む6部門にノミネート。なかでも助演女優賞のノミネートのニコール・キッドマンは義理の母の演技で、さまざまな賞を受賞している。血の繋がらない二人の養子の男の子たちを分け隔てなく愛し、懸命に家族であろうとする姿が素晴らしい。ニコール自身も養子の母であるということとも重なり、現代の家族の在り方について深く考えさせられる。 

『未来を花束にして』
女性に選挙権のない時代のロンドン。男性より劣っているとみなされ、同じ仕事でも低賃金で働かされていた女性たちが過激な手段を使ってでも、未来の女性たちのために権利をつかみ取ろうとする社会派ドラマ。普通の主婦たちが自分たちの娘やそのまた娘たちが同じようなつらい目に遭わぬよう、一人また一人と行動を起こしていく。いまの自分たちにさまざまな権利があるのは名も知らぬ母親たちの団結があったからこそ。果たして、自分にそんなことができるのだろうか。次第に暴徒化していく姿に驚かされながらも、そうせずにはいられなかった彼女たちの境遇に胸がいっぱいになる。

●BEST女優
エイミー・アダムス (『メッセージ』『ノクターナル・アニマルズ』『ジャスティス・リーグ』)
謎の中国語さえ、なければと悔やまれる、それ以外は完璧だったエイミー・アダムスの演技にすっかり騙された『メッセージ』。肝の据わった女(あるいは土壇場で開き直る女)をやらせたらピカイチ。『ジャスティス・リーグ』のロイス・レイン然り。『ノクターナル・アニマルズ』で見せた無意識に漏れ出てしまう女の残酷さをさらけ出した姿もあっぱれ。 

●BEST男優
ヴァンサン・カッセル(『たかが世界の終わり』『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』)
『たかが世界の終わり』ではゲイの弟との距離感に戸惑う粗暴な兄貴。『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』では自分本位の愛を貫こうとする夫。憎めないダメ男を体現して、作品に奥行きをもたらしたヴァンサン。ハリウッド大作の出演も悪くはないけれど、ヴァンサンは悩ましい、愛、アムールを繊細に演じてこそ、本領発揮。

  • 高山亜紀/今年もたくさんのイケメンに会いましたが、『帝一の國』メンバー勢揃い取材は一生、忘れないでしょう。まるで満漢全席(笑)。とんでもなく爽やかな竹内涼真くんはその後、ELLEMENシリーズで取材。大反響でまたびっくり!

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