ジャンル別で発表! 映画ジャーナリストの2017年BEST映画【前編】
2017/11/23(木)
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5/6

SFアクション映画BEST/平田裕介さん

『ブレードランナー2049』
前作で提示された数々の謎に対する答え合わせに徹しただけの作品になるものだと勝手に考えていたが、良い意味で期待を裏切られた。さらに新たな謎を放り込みつつ、見た目は人間ながら人間として生きるのを許されぬレプリカントの悲壮と希望を深く掘り下げ、ビジュアル重視ではない重厚なドラマに仕上げている。描かれる2049年は、生態系が完全壊滅したうえにLAは酸性雨どころか豪雪に見舞われ、ベガスは砂漠の廃墟と化していて前作より絶望度は増。だが、主人公の上司ジェシを筆頭に、2049年の世界を動かして物語の鍵をも握っているのは、ほとんどが女性なのだ。環境は崩壊したが、女性の地位は確実に向上している未来に少し安堵した。

『ワンダー・ウーマン』
ダイアナの胸のすく活躍を描いているが、桃源郷的な孤島で暮らしてきた彼女が外界の真実を目の当たりにするさまを追うドラマにもなっている。世の主導権を握る男たちが勝手に始めた戦争の愚かさとおぞましさ、ジェンダーの差異やマイノリティであることであらゆる道を閉ざされる者たちの姿に心を痛めながらも、女性ならではの慈愛の精神と超人的能力でそんな世界を救おうとする姿に胸を打たれた。だが、なにより痛快なのはパティ・ジェンキンス、ガル・ガドットという女性監督と女優がタッグを組んだ本作がメガヒットを飛ばし、男性主流の映画界に何かしらの大きな風穴を開けたこと。彼女らのイケイケぶりが、劇中のダイアナとも重なって感無量。 

『LOGAN/ローガン』
特殊合金アダマンチウム製の爪で、ローガンが悪人たちを倒すシーンの人体破損描写はスプラッターの域。これにより、たとえ正義の側にいる超人であろうとも結局は殺人者に過ぎないのではという、ウルヴァリンが抱いてきた疑問や苦悩を明確に描破。この時点で従来の『X—MEN』シリーズやアメコミ映画とは違うと、ハートの導火線に着火。そして、ローガンの凶暴性のみを完全抽出したクローンであるX-24との対決で自身の存在意義を見出し、自身の遺伝子を受け継いだ娘ともいうべき少女X-23との交流を経て無縁だった愛を知る展開に燃えに燃え上がった。老眼鏡に頼る年齢となったローガンに扮したヒュー・ジャックマンの妙演にも泣かされた。

●BEST女優賞
ソフィア・ブテラ(『ザ・マミー/呪われた砂漠の女王』)
ジャンケンで負けた程度でも泣き出しそうな尋常ならざる気の強そうな面構えを活かし、世界支配に執着して暴れまくる王女を熱演。その存在感はトム・クルーズを凌ぐほど。『アトミック・ブロンド』の妖しい彼女も最高!

●BEST男優
ドウェイン・ジョンソン(『セントラル・インテリジェンス』)
アクション俳優のイメージが強いがコメディもイケる。人並み外れすぎた屈強な肉体やいかついにも程がある顔面を笑いに転化できる柔軟さは特筆もの。ウエストポーチを装着して立つだけで笑いが取れるなんて彼だけでは?

  • 平田裕介/映画ライター。あのサモ・ハン・キンポーにインタビューできた感動で涙する一方、ライアン・ゴズリングへのスカイプ越しの取材では溜息を連発されてひどく戸惑った本年。とりあえず、来年は『オーシャンズ8』『パディントン2』『シェイプ・オブ・ウォーター』『パシフィック・リム:アップライジング』に期待!

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