ジャンル別で発表! 映画ジャーナリストの2017年BEST映画【前編】
2017/11/23(木)
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ドキュメンタリー映画BEST/立田敦子さん

『海は燃えている ~イタリア最南端の小さな島~』
アフリカに最も近い、イタリア最南端の島ランペドゥーサ島は、アフリカや中東からヨーロッパを目指す難民たちの玄関口。素朴な風景と緊張感溢れる移民たちの実態のギャップに戸惑い、カメラが捉えている「現実」をまともに捉えるのに時間がかかった。『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』でヴェネチア映画祭金獅子賞に輝いたジャンフランコ・ロージが詩情あふれる映像で描き出す彼らの物語は、静かながらあまりにもドラマティックだ。

『アイリーン・グレイ 孤高のデザイナー』
モダニズム建築の先駆者でありながら、長い間、歴史の表舞台から遠ざかっていたアイリーン・グレイ。ほぼ同時公開されたル・コルビュジエとの複雑な関係を描いた劇映画『ル・コルビジュエとアイリーン 追憶のヴィラ』のリサーチ過程での映像素材を元にしたドキュメンタリーがこの作品。関係者や研究家たちのインタビューが大半を占めるが、家具デザイナー、建築家としてのポートレイトはもとより、20世紀前半に女性がアーティストとして生きることの革新性を鋭くつく、会心作。

『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』
19歳で史上最年少の英国ロイヤル・バレエ団のプリンシバルとなり、その絶頂期の2年後、突如退団。その後、MVなどに出演し話題になった。ウクライナ出身の天才ダンサー、セルゲイ・ポルーニンがいかに芸術と向き合い、人生と向き合い、苦悩したのか。フィルムに収められたダンスシーンも圧巻だが、本人を始め、家族や関係者たちからのインタビューで浮き彫りにされる、ひとりの人間としてのポルーニンのひたむきな生き様に感動する。

●BEST女優
イザベル・ユペール(『ELLE/エル』)
下手すると俗っぽくもなりかねないストーリーを、芸術作品に昇華させたのは、まさに主演女優ユペールの力。ひょうひょうとした表情、可笑し味の中にある核心。愛、恋、性、親子、キャリア。アッパー50の女性の人生をここまで真実味をもって演じられる女優が他にいるだろうか。一見、キツイ女ながらこんなにも愛されるヒロインは珍しい。

●BEST男優
ケイシー・アフレック(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』)
兄ベン・アフレックの影になり、過小評価されてきた感のあるケイシー・アフレック。その才能が全開となった。過失から家族を失い、人生を崩壊させてしまった男が、亡くなった兄の息子と共同生活を送る。お気楽な“孤独”を捨てて、面倒な人間関係を築いたことで、今まで目を背けてきた人生と向い会うことになる男。ダメ男ながら、応援したくなるのはこの俳優のもっている誠実さという資質のためだろう。

  • 立田敦子/『シング』、『美女と野獣』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 』『ベイビー・ドライバー』、『アトミック・ブロンド』、『パターソン』などサントラがいい映画が強かった年。やはり音楽の力は絶大だ!

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