映画ジャーナリストが選ぶ! 2015年のMYベスト映画【後編】
映画好きなエル読者の投票により、その年のベスト映画を決める「ELLEシネマ大賞2015」がいよいよ今年から開催! 読者投票に先駆けて、エルでおなじみの映画ジャーナリスト9名が、部門別に2015年のベスト映画&俳優を選出。映画を知り尽くしたプロたちが選んだベスト3を、前編、後編の2回に分けてお届けします。
ママン映画部門BEST3/髙山亜紀さん
『Mommy/マミー』
毎作、衝撃と感動を与えてくれる、天才グザヴィエ・ドラン監督。愛を描き続ける監督の母と息子のドラマは『マイ・マザー』で体験済みだが、あちらが私小説なら、こちらは圧倒的にドラマティックでわかりやすいエンターテインメント。134分の長い間、全編、スクリーンに目が釘付けで、微動すらできない高揚状態に連れて行かれる。1:1というインスタグラムのサイズも新鮮。主人公のスティーヴがスケボーに乗りながら、スクリーンを広げていく場面が圧巻で、観ている側にも自由の素晴らしさが伝わる奇跡の瞬間だ。
『アリスのままで』
若く美しく聡明なアリスが若年性アルツハイマーで次第に記憶を失っていく。本作で念願のオスカーを獲得したジュリアン・ムーアの鬼気迫る演技は言うまでもなく、困惑する家族たちの姿もリアル。介護されるアリスの気持ちも介護する娘の立場もどちらもわかるからこそ、やるせない。いい子の長女、ケイト・ボスワースと、気ままな次女、クリステン・スチュワートの姉妹ならではの葛藤、不妊治療から、やっと妊娠したにも関わらず、母の病気が遺伝性と知った長女の決断など、アリスを取り巻く人々のエピソードも見逃せない。
『わたしに会うまでの1600キロ』
母を亡くしたショックから堕落した女性が単身、1,600キロの距離を3カ月かけて1人で歩き通し、母が愛した本来の自分を取り戻す。母と娘という特別な関係性について考えずにはいられない素敵な物語だった。自分のした後悔を決して娘にはさせたくない。父と息子、父と娘、母と息子には生まれない、母の娘に対する感情。母役のローラ・ダーンが短い出演で、なぜ、オスカーにノミネートされるまで評価されたのか意外だったが、彼女の存在感は後になるほど、効いてくる。母、そして娘である女性にぜひ観てほしい一本。
●ベスト男優
イーサン・ホーク(『ドローン・オブ・ウォー』)
『6才のボクが、大人になるまで。』のお父さん役が素敵だったイーサン・ホーク。今年は『ガタカ』のアンドリュー・ニコル監督と再び組んだ『ドローン・オブ・ウォー』で仕事と家庭のギャップに苦しむ軍人を熱演。名監督に愛され、認められ続ける才能はいまや円熟期。監督作である、ピアニスト、シーモア・バーンスタインとのドキュメンタリー『Seymour: An Introduction(原題)』の公開が待たれる!
●ベスト女優
イザベル・カレ(『奇跡のひと マリーとマルグリット』)
今年の取材相手で一番、印象に残ったのが『奇跡のひと マリーとマルグリット』のイザベル・カレ。撮影後に3人目の子どもを出産したという彼女は「撮影で子どもと離れるときは、作品にその価値が本当にあるか、熟考するようになった」と母となった現在の方が仕事に対してシビアになったと語る。さらに仕事と家庭の両立については「友達に会いたいとか、ご飯を食べたいとかは最小限にして、仕事と子どもの時間を最優先にしてます」ときっぱり。笑顔が素敵で、きらきらしていました!
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髙山亜紀/女性誌を中心に執筆している映画ライター。エル・ママンで映画紹介、エル・オンラインでは「注目のイケメンにELLEが会いに行く!」を連載中。来年の注目株はずばり真剣佑。