特集
2015/11/20(金)

音楽と官能。私たちの生活に欠かせないこのふたつを、音楽に精通するエッセイストでありディレクターの湯山玲子さんが大胆に、かつ深く語りつくす連載「エロスと音楽」。第4回目は、昨今増殖中の“M男”の快感を表現しているかのようなマイケル・フランクスの名曲から、小悪魔女子×翻弄されるM男のセクシーな関係性を読み解きます!

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小悪魔女子に翻弄される“M男”のエロス

本当にちょっと前まで、SMは立派な「変態」として人々に思われていた。縄に緊縛され、ムチで打たれて欲情するなんぞは、普通に生活している婦女子にとっては、一生縁がないだろうというハードな性愛の姿。エロ漫画や小説で見知ったとしても、ソノ行為を現実に実行できるか? となると、その敷居はエベレスト並みに高かった。つきあった彼氏がたまたまSM趣味、それも、そういうことをきちんと自分の彼女とイタすことかできる有言実行タイプでなければ、事実上不可能。普通の人々にとって、SMというものは、ファンタジーの世界のもので、どこか違う惑星の性のしきたりぐらいに思われていたのだった。
 
しかしながら、ただ今のインターネット時代、SMと私たち大衆の間にあった壁は完全崩壊。SMは変態ではなく、日常生活で堂々実行可能なセックスコミュニケーションのひとつとして認識されている。ヘタをするとうら若き奴隷志願女子が、調教オヤジと遠隔プレイを実行するようなことも珍しくない、ものすごいカジュアル化が起こっているのである。清純そうなアイドルが「私、Mなんですぅ~」といっても、誰も眉をひそめることはない。
 
さて、男女のSMの役割分担は、積極的に攻める男と、受け身の女、という伝統的なセックスを踏襲して、S男とM女というパターンが一般的だと考えられてきた。ところがどうも、現実には、思ったよりもM男が多い、ということが、飲みの場の話題でも、お笑い芸人たちの暴露トークなどからでも、判明し始めている。まー、快楽は絶対に「受け身」の方がラクでトクというのは、肩を揉む方よりも、揉まれる方が気持ち良いというセオリーで充分に説明がつくわけで、「女を支配して君臨してこその男」というあり方が崩壊している今、「こっちだったわ、実はオレ」とM男は増殖中なのだ。

photo : Getty Images

  • 湯山玲子(ゆやま・れいこ)/著述家。ディレクター。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。学習院大学卒。サブカルチャーからフェミニズムまで横断したコラムで人気。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニ ブックス)などがある。最新作『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(角川書店)では、“男のこじらせ”を分析し、ヒット中。
     
    公式ホームページ/http://yuyamareiko.blogspot.jp/

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