特集 2015/11/27(金)
早耳調査隊が行く!

【最終回】大統領の消された妹:アメリカのファッション史を築いたケネディ家の女たちの光と影

ジャクリーン・ケネディ・オナシス、その妹のリー・ラジウィル、ジョン・F・ケネディJrに嫁いだキャロリン・ベセット・ケネディ。ファッション・アイコンとして今もなお絶大な人気を誇り、現在も影響を与えているケネディ家の女性たち。でもその陰で人知れず存在を葬られた長女がいた……。華麗なる一族に隠された悲劇の長女、ローズ・マリーの人生が最新の資料に基づき1冊の本「ROSEMARY The Hidden Kennedy Daughter」として出版されたばかりの今、ケネディ家の女性たちのパワーを振りかえれば、その分だけ強かった影の部分も見えてくる……。最終回は大統領の妹、ローズマリーの“隠された”人生の物語。

ユーニス・ケネディ(Eunice Kennedy)、エドワード・ムーア(Edward Moore)、ローズマリー・ケネディ(Rose Marie Kennedy)

政界を牛耳るため父親が破壊したピュアな人格

まさにこのことが、両親が最も危惧していたことだった。23歳になっても、ティーンにしか見えず、美しくて、人を疑うということのない彼女が、カトリック家庭の子女で最も大切なもの、つまり純潔を失いかねず、さらに言えば魅力的な若い女性であるがために、妊娠、性病、家門の恥となり、さらにはケネディ家の政治活動の障壁になるのではないかという不安だった。このような悩みのなか、父親が当時全国的に有名だった神経外科医、ウォルター・フリードマン医師にたどりつくのは時間の問題だった。ローズやキャスリーンは強固に反対したが、結局は父親ジョセフが手術を決めた。しかし問題だったのは、当時フリーマン医師が執刀したのは80名で、全てが当時の精神医学界ではコントロールできないほどの重度の患者だったこと。
 
身体的には健康で単に軽度の発達遅滞がある程度、時々情緒不安定になる普段はふつうの若い女性であるローズマリーに、ロボトミー(脳の一部を破壊する脳神経外科手術。現在の医学ではタブー)という手術を施すのは、当時であっても誰が見ても穏当な手段ではなかった。しかし、父親ジョセフは強硬に手術に踏み切った。結果、手術は完全に失敗した。ローズマリーは半身にマヒが残り、精神状態は幼児の状態まで後退。それ以降、ローズマリーはあらゆる施設をたらい回しにされ、残された家族は彼女がもはや彼女が生きていないかのようにふるまった。妹のユーニス(アーノルド・シュワルツェネッガーの元妻、マリア・シュライバーの母)はその後10年間、姉がどこにいるのかさえ知らなかった。

 
1949年、ローズマリーはウィスコンシン州ジェファソン郡にあるセント・コレッタ校へ移された。ここでローズマリーは数人の修道女に見守られて、専用の小さな家に隔離されて過ごしていた。セント・コレッタに移されてすぐ、母ローズがローズマリーを初めて見舞ったが、その時ローズは自分が見た娘の姿に打ちのめされ、その後20年間一度も娘に会うことはなかった。1961年、妹のユーニスは姉のように発達障害を持つ子どもたちを招くキャンプを開催し始めたが、関係者の多くはローズマリーのことを知っていて、彼女をまるで亡き者のように扱うケネディ家を批判していた。

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Photo:GETTY IMAGES Text:Ryoko Tsukada

  • (参考文献)
    ローレンス・リーマー「ケネディ家の女たち」
    Edward Klien 「Just Jackie : Her Private Years」 
    ネリー・ブライ「ケネディ家の悪夢 セックスとスキャンダルにまみれた3世代の男たち」 
    クリント・ヒル「ミセス・ケネディ 私だけが知る大統領夫人の素顔」

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