【第二回】どれが獲っても論争勃発!? グラミー賞2017をブッタ斬り
2017/02/08(水)
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誰もが手に入れることが出来るかもしれない“強さ”という“可能性”について歌ったビヨンセの「フォーメーション」

ビヨンセが「フォーメーション」で伝えたかったこと

これまでもずっと世界中の“ガールズ”に向けて語りかけてきたビヨンセの「フォーメーション」の場合も、やはり同じく“女性の自立”がテーマ。ただこちらは、家族だけではなく友人たちも含めた女性同士の繋がり、いわゆる“シスターフッド”が主役。「女子だけで戦列を組んで、いろんな困難を乗り越えていこう!」という歌です。リアーナが“弱さ”というモチーフを使って、“現状”を描いたとすれば、ビヨンセは誰もが手に入れることが出来るかもしれない“強さ”という“可能性”について歌っている。二重の意味で対照的な曲でもあるんです。

そして、この曲の冒頭では「私のパパはアラバマ出身、ママはルイジアナ出身、そんな黒い肌をミックスして、クレオールを足したのがテキサス娘の私なの」と歌うことで彼女自身の引き裂かれたアイデンティティについても触れています。人種についての歌でもあるんです。それ以外にもこの曲のリリックには、ビル・ゲイツ、ジバンシィ、イルミナティ、ロッカフェラ、ジャクソン5、レッドロブスター、エアジョーダンなど、いくつもの固有名詞が登場します。誰もが知っている固有名詞を使うことで、リリックが描き出す景色をグッと広げていく。J-POPにはあまり見られない伝統ですが、こうしたスタイルも含め、やはり素晴らしいリリックです。

なので、本当に甲乙つけがたい。しかも、これは後述しますが、実はアデルの「ハロー」も捨てがたい。商業的にはリアーナの「ワーク」は全米チャートで8週連続No.1、アデルの「ハロー」は10週連続No.1。売上枚数では、2曲ともビヨンセを引き離している。

Text: soichiro tanaka Photo: Getty, Aflo

  • 田中宗一郎/音楽サイト「ザ・サイン・マガジン」のクリエイティブディレクター、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『ロッキング・オン』副編集長を務めたのち、1997年に自ら音楽雑誌『スヌーザー』を創刊。その後、2013年秋にWEBメディア「ザ・サイン・マガジン」を開設。『スヌーザー』がオーガナイズするクラブイベント、クラブ・スヌーザーは全国各地にて現在も開催中。@soichiro_tanaka

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