【第二回】どれが獲っても論争勃発!? グラミー賞2017をブッタ斬り
2017/02/08(水)
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ビヨンセの2016年に開催された「フォーメーション・ワールド・ツアー」での1コマ

リアーナ、ビヨンセ、アデル誰が優位?

リアーナの場合、そもそもはジャマイカ音楽であるダンスホールレゲエをここ数年の流行りのトロピカルハウス風にアレンジ。ビヨンセの場合、1拍目に重低音のキックを利かせ、チキチキと細かく鳴るハイハットとのバランスで、お尻をぶるんぶるん振って踊るには最適のアトランタ発祥のドープなビート=“トラップ”を使った曲としては、ほぼ世界初の歴史的なヒットです。最新のトレンドを誰よりもポップに仕上げた曲で、どちらも革新的。甲乙つけがたい。しかも、この2曲、どちらもリリックまでも最高なんです。

“弱さ”というモチーフを使って、“現状”を描いたリアーナの「ワーク」

リアーナの「ワーク」のテーマは“女性の自立”。仕事のために恋愛を犠牲にしてしまったり、愛する男のために働く羽目に陥って、自分自身を見失ってしまったり……。そんな恋愛と仕事の間で引き裂かれてしまう女性の社会的な立場の難しさをラブソングという形式を使って見事に描いている。しかも、リアーナの以前のボーイフレンドでもあり、“別れてしまった以前のガールフレンドのことをウジウジと悔やみ続ける”というキャラで人気を博したドレイクをフィーチャリング。「俺のために働いてくれたら優しくしてやるぜ、でもそれが嫌なら別れたっていいんだぜ」的なことを歌わせるという念の入れよう。つまり、「女性は自立しないと!」と大声で呼びかけるのではなく、気がつけば男に貢いでしまう女というモチーフを使った物語仕立てで、女性の社会的な自立の困難さをエモーショナルに伝えている。ポップソングの鑑のような素晴らしい曲です。

Text: soichiro tanaka Photo: Getty, Aflo

  • 田中宗一郎/音楽サイト「ザ・サイン・マガジン」のクリエイティブディレクター、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『ロッキング・オン』副編集長を務めたのち、1997年に自ら音楽雑誌『スヌーザー』を創刊。その後、2013年秋にWEBメディア「ザ・サイン・マガジン」を開設。『スヌーザー』がオーガナイズするクラブイベント、クラブ・スヌーザーは全国各地にて現在も開催中。@soichiro_tanaka

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