歌舞伎は楽しくなくちゃいけない! 市川海老蔵が語る、素顔の“EBIZO”12の質問
自分にキャッチコピーをつけるとしたら、「10代、20代の自分はベルセルク、30代は脱皮」と話す十一代目市川海老蔵。少し遠かった歌舞伎を、身近なものに……。歌舞伎の可能性をとことんまで広げようとするスターが素顔で語ってくれた、歌舞伎について、番外編のプライベートQ&Aと12の質問にアンサー!
やはり役者ですから、いい方がいい
Q5 親交が深い坂東玉三郎さんや故十八代目中村勘三郎さんから受けた教えはありますか?
最近までは、歌舞伎も保守的だったんです。「歌舞伎役者はTV CM出るな」というように。それを打破したのが、多分三代目の市川猿之助さんだと思う。それから玉三郎さんという人が出てきて、それを見て、「俺も行くぞ!」と、頑張ったのが勘三郎兄さん。そういう先人達を我々が見ている。やっぱり、雪道も降った後は歩きづらいけど、誰かが歩いた後は、加工されているわけですから歩きやすいですよね。我々はそこが歩きやすくなっている状況があるから、もっと行かなくてはいけないという義務があると思うんです。
“伝統”は、形を変えちゃいけないものが多い。でも状況によっては、変化させた方がいいに決まっていることもある。父(故十二代市川團十郎)とも舞台のことではよく対立しましたよ。本来、歌舞伎だと親子関係は師弟関係で絶対服従しなくてはいけません。ただ、僕はなんかおかしかった(笑)。「ダメなものはダメだろう」とはっきり言うタイプで、日本人というよりも外国の人の気質なのかもしれないですね。
Q6 2017年2月に予定されている「六本木歌舞伎」の構想は?
これはどちらかというと、歌舞伎じゃないですね、僕の中ではね。「座頭市」がテーマの現代の舞台、ですね。クラシックはクラシックだし、モダンも僕からしてみると、古典なんです。今もっと“現代”なんだから。歌舞伎も同じで、古典があって、世話物があって、最近のものがあって、もっと新しいものがあるというのは同じなんですよね。クラシックとモダンが違うでしょ、というけど、今がある。もっと現代の“この瞬間”があるじゃないという感覚なんです。
ただ、お相撲さんがカレーを作っても“ちゃんこ”なので、海老蔵が出て歌舞伎と名打つからには歌舞伎なんですよね。勘三郎さんが「“歌舞伎”を探すために僕はしているんだよ」と、おっしゃっていたけど、そういう意味じゃ歌舞伎は本当に難しい。全部、我々が接するところが歌舞伎。古典も歌舞伎、古典が歌舞伎、70年前はそれは古典じゃなかったし、100年前も古典じゃなかったし。400年前は新しいものだったし、現代では古典だし、でも古典との関わりはこの目の前のテーブルくらいしかないし。
そうしたら、どこを歌舞伎というのか。歌舞伎役者が出ているものが歌舞伎なのか、歌舞伎役者と混合で出ているものがあるじゃないですか、それをどういう風にするのか。きちんと整理してプランしながら作っていかないといけないと気が引き締まります。
エンターテイメントとして、どこまでやるか。どこまでもやっちゃうなら、全部やっちゃわないといけない。そこですよね、肝心なのは。歌舞伎というコンテンツを守りつつやる方がいいですし、もし新しいことをやる場合は、歌舞伎ということではなく、自分のものとしてやっていかなくてはいけなくなっちゃう。でもそれが多分、一番、僕以外の人が怖いことだと思うんです。壊れる、変わってしまう、ついていけない、制御ができない、さまざまなことが生じるわけですから。歌舞伎も裏方で携わっている人間はたくさんいますし、その割に、広く一般の方に見てもらえてはいない。若い世代は葛藤しているんじゃないでしょうか。
Photo : Yusuke Miyake Movie : HIROBA Styling : Atsushi Ohkubo Makeup : Isao TSUGE(KOOGEN)
スリーピーススーツ¥420,000 シャツ¥49,000 ネクタイ¥25,000 (すべてイザイア/イザイア ナポリ 問い合わせ先/東京ミッドタウンtel.03-6447-0624)
参照文献:『海老蔵そして團十郎』(関容子著 文藝春秋刊) 『市川海老蔵 眼に見えない大切なもの』(講談社刊) 『そして、海老蔵』(村松友視著 世界文化社刊)
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市川海老蔵 Ebizo Ichikawa
歌舞伎役者(屋号 成田屋)、俳優。故十二代目市川團十郎の長男として、1977年12月6日東京に生まれる。5歳で初お目見得を果たし、7歳で『外郎売』(歌舞伎座)貴甘坊役で七代目市川新之助、2004年に十一代目市川海老蔵を襲名。歌舞伎公演を中心に舞台や映画、ドラマなど多方面で活躍し、2011年公開の主演映画『一命』ではカンヌ国際映画祭にもノミネート。2007年のパリ・オペラ座での親子共演による歌舞伎公演をはじめ、自主公演「JAPAN THEATER」の海外公演にも熱心に取り組み、シンガポール、UAEに次いで、2016年3月にはNYカーネギー・ホールでの「GRAND JAPAN THEATER」公演も大きな話題を呼ぶ。2017年2月4日(土)~20日(月)には、市川海老蔵×リリー・フランキー×三池崇史、寺島しのぶの共演による“座頭市”をテーマに描く六本木歌舞伎「座頭市(仮)」に出演予定。
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