豪華なキャストも話題!
そして25年後、より進化した新作ドラマが始まる
旧作ですべてのエピソードを監督したかったデヴィッド・リンチだが、同時進行していた次回作の撮影を優先したという経緯がある。その映画、『ワイルド・アット・ハート』(90)はカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞。国際的な名声を得た一方で、現場不在のため作品をコントロール出来なかった「ツイン・ピークス」は、視聴率の低下も相まって打ち切りとなってしまった。怒ったリンチは、最終話を衝撃的な展開で唐突に終わらせ、物語を破綻させることで復讐したとも言われている(マーク・フロストは破綻させたことについて後にインタビューで「サードシーズンに繋げるために意図したもの」と答えているが、次頁カイル・マクラクランへのインタビューにおける発言にも注目頂きたい)。
そして、「ツイン・ピークス」にはこんな名台詞もある。「同時にふたつの出来事が起きた場合、慎重に対処せねばならない」。旧作での後悔からか、今回デヴィッド・リンチは18話すべてで演出を手掛け、まるで18時間の映画であるかのように作品全体をコントロールしている。
新作「ツイン・ピークス」は、旧作の最終話でローラ・パーマーがクーパーに向かって「25年後、またお目にかかります。それまでは」と赤い部屋で語りかけたことが現実となった。実際には26年経過しているが、撮影時換算だとほぼリアルタイム。(一部を除いて)旧作のキャストが勢揃いしたことで、役者もまた実際に25年経過した姿で新作に挑んでいる。
新作は徹底した秘密主義で製作され、ナオミ・ワッツやアマンダ・セイフライド、モニカ・ベルッチなど新たなキャストを含む総勢217人の出演が発表された。デヴィッド・リンチの『インランド・エンパイア』(06)に出演していた裕木奈江が参戦しているのも話題だが、一方でストーリーの内容は謎に包まれたまま。7月に全米で放送された第8話は、あまりにも前衛的で衝撃の内容が話題を呼んでいる。しかし不安に陥る必要はない。かつてデヴィッド・リンチはインタビューでこんな言葉を残している。「映画に理論的な説明はいらない、人生だってそうだから」と。
Text: Takeo Matsuzaki Photo: Getty Images、Aflo
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松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。
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新作「ツイン・ピークス」
2017年7月22日(土)夜9時よりWOWOWプライムにて日本独占放送 (全18話)
http://www.wowow.co.jp/drama/tp2017/