伝説の海外ドラマ「ツイン・ピークス」が帰ってきた!
2017/07/21(金)
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旧シーズンの魅力①

映画監督デヴィッド・リンチが海外ドラマを変えた!

当時『ブルーベルベット』(86)で高い評価を得るなど、アメリカのインディーズ映画界を代表する映画監督だったデヴィッド・リンチ。現在ではあたり前のように映画人が海外ドラマへ参加しているが、当時はテレビドラマが映画よりも低く見られていた時代。「ツイン・ピークス」は、人気映画監督がテレビシリーズの製作総指揮をするということでも話題となったドラマだった。

町で人気者だった女子高生ローラの死体が発見され、捜査の進行と共に町に渦巻く闇が暴かれてゆくという物語。視聴者の間ではローラ殺しの真犯人探しが始まり、謎が謎を呼ぶ展開で社会現象にまでなった。日本でも「ローラの日記」や「クーパーは語る」といった関連書籍が出版され、それぞれ20万部前後を売り上げるベストセラーになったほど。

デヴィッド・リンチと共に欠かせないのが、「ツイン・ピークス」の脚本家でありプロデューサーでもあるマーク・フロストの存在。ふたりはマリリン・モンローの伝記映画の企画で出会った。企画は頓挫したが、奇しくも<死んだヒロインの真相>という点は「ツイン・ピークス」に引き継がれている。意気投合したふたりは、連続ドラマによって長編映画ではできない試みに挑戦。『NORTH WEST PASSAGE』のタイトルで始まった企画は、やがて「ツイン・ピークス」へと繋がっていったのである。

「ツイン・ピークス」が支持された理由のひとつは「デヴィッド・リンチはテレビの世界でも、やはりデヴィッド・リンチだった」という点にある。3大ネットワークのABCテレビで全米に放映されたこのドラマは、多くの視聴者の目に触れるのと同時に、制約の多い環境で作品を創り上げなければならないという現実とも向き合わなくてはならなかった。そのような状況にも関わらず、本作には映画的な演出が散見できる。例えば、赤を基調とした独特な色彩設計や、すべての出来事がひとつのフレーム内で起こるような絵画的フレーム構成。モンタージュによってローラの死を察する教室場面の秀逸さは、誰一人として「ローラが死んだ」とは言っていないにもかかわらず状況を悟らせていることからも窺える。

  • 「ツイン・ピークス」

    カナダ国境に近い田舎町ツイン・ピークスで、人気者の女子高生ローラ・パーマーの死体が発見される。FBI捜査官デイル・クーパーが地元警察と協力しながら事件を捜査してゆくうち、不可解な人間関係と町に渦巻く闇が暴かれてゆく。果たして誰がローラを殺したのか? やがて物語は複雑な人間関係を提示しながら、常識を超えた超常現象をも導いてゆく……。1990年にデヴィッド・リンチが製作総指揮として手掛けたテレビシリーズ。世界的なブームを巻き起こし、<ツイン・ピーカー>と呼ばれる熱狂的なファンを生み、日本でも缶コーヒーのCMとして独自のエピソードが描かれるなどの社会現象となった。旧作「ツイン・ピークス」(全30話)はWOWOWメンバーズオンデマンドにて一挙配信中。

Text: Takeo Matsuzaki Photo: Getty Images、Aflo

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

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