Midori's EYE
自立した女の時代を切り開いた美女二人
'50年代以前にデビューして、のちの美女女優たちに公私共どもリスペクトされたのは、何と言ってもキャサリン ・ ヘプバーンだろう。1907年、アメリカの進歩的で裕福な家庭に育ち『フィラデルフィア物語』('40年)をはじめ、洗練されたロマコメに多数出演。子どもの頃からオテンバで自立心が強かった。超美人というのではないけれど、長身を生かしたハツラツとした演技でユニークな魅力を発散。当時としては珍しくパンツスタイル好み、それがよく似合った。名コンビだった俳優スペンサー ・ トレーシーとは彼の死まで事実婚。公私にわたってオシャレに「自立」を貫いた大スターだった。2003年、96歳!で他界。
もう一人、のちの美人女優たちに敬愛されているのはイングリッド ・ バーグマン。1915年、スウェーデン生まれ。まさに北欧美人。「君の瞳に乾杯」という名セリフが出て来る『カサブランカ』('42年)をはじめ、『白い恐怖』『汚名』『山羊座のもとに』と立て続けにヒッチコック映画に出演。美貌と演技力そして五カ国後を操る語学力を兼ね備えた大女優に。私生活ではイタリアのロッセリーニ監督との不倫スキャンダルがあったものの、何しろ大女優なので映画関係者たちはリスペクトし続けた。中年になって色香は衰えても、その年頃にふさわしい役柄を演じ続けた。1982年、長い闘病生活の末、乳ガンで死去。66歳。
文・選:中野 翠(コラムニスト)
Photo: AFLO、GETTY IMAGES
-
中野 翠
コラムニスト、エッセイスト。『サンデー毎日』に1985年から続く人気コラムをもつほか、映画評論では『週刊文春』のシネマチャートでもおなじみ。近著に、学生運動まっさかりの'60年代の青春を回想した『あのころ、早稲田で』(文藝春秋刊)がある。 -
『エル・ジャポン』8月号をチェック!
今月号のエルは、1冊まるごと映画特集! 時代を超えて人々を魅了し続ける1950年代~現在までの女優たちを映画通が語る“伝説の女優クロニクル”や、スクリーンのなかのヒロインからおしゃれを学ぶ“おしゃれ映画で着こなしレッスン”、“下半期に見るべき新作シネマ”など、映画ファンならずとも永久保存版の一冊。そのほか、“相棒ウォッチの選び方”、“夏のビューティTIPS”、“台湾2泊3日10食の旅”など、さまざまなトピックスが目白押し。