POST MINIMALISM
ついに舞台は大自然へ! 拡張するミニマリズム
ニューヨークート震源地はソーホー へ・アートの歴史を語る上で忘れてならないのはソーホーのギャラリーシーンだろう。'69年、一番乗りしたのは、若き女性ディーラー、ポーラ・クーパーだ。荒れ放題の倉庫街はアーティストが住む街であり、創造の気迫と活気に満ちていた。ほどなくカステリもやってきて、彼が入った「西ブロードウェイ420番地」のビルには、前妻のイリアナ・ソナベンドや若手ジョン・ウェーバーの画廊もオープン。後に伝説となる数々の展示によって、ソーホー詣での中心地となっていく。
ロフト空間に広がるポスト・ミニアートマルのインスタレーションやビデオ、パフォーマンス。これら'70年代のアートには、'60年代後半の反戦デモや公民権運動、フェミニズムに端を発する社会派的な視点も目立った。その一方で、アート表現を突き詰めたミニマルやコンセプチュアルの動きは袋小路に突き当たり、美術館や画廊を飛び出して大地を舞台に活躍するランドアートやアースワークの作家たちが現れる。
なかでも勢いづいたのは、理論重視のアートや「絵画の死」に反発する若い画家たちの一群だ。抽象表現主義を思わせる派手な筆触のジュリアン・シュナーベルや、郊外の中流家庭の日常をクールに描くエリック・フィッシュル。地下鉄ホームに出没するキース・ヘリングのグラフィティ。これら「ニューペインティング」の面々が活躍する一方で、シンディ・シャーマンやバーバラ・クルーガー、ジェニー・ホルツァーら、写真や言葉を武器に男性中心のモダニズムの歴史を暴いてみせる女性作家たちが次々と登場した。
有機的でのびやか。女性の感性で勝負
エヴァ・ヘッセ(1936-1970)
同じ工業素材でも、ファイバーグラスやラテックスなど合成樹脂を用いて有機的なフォルムを生み出したヘッセ。厳格でクールなミニマルアートに対し、身体性やシュールさが強調されたポスト・ミニマルの代表選手。「エキセントリックな抽象」展で注目され、草間やルイーズ・ブルジョワら、当時数少ない女性作家として活躍するが、1970年、脳腫瘍で早逝する。
語り継がれるランドアートをマンハッタンで体験
ウォルター・デ・マリア(1935-2013)
ニューメキシコ州の平原に400本もの金属棒を立て、風や陽光、落雷によって変化する壮大な大地のアートを試みたウォルター・デ・マリア。遺作の一部が、ソーホーのギャラリー空間で恒久展示されている。《ブロークン・キロメーター》の床に並ぶ金属棒は、繋げれば1キロの距離になる。想像性が刺激される珠玉の空間。
THE BROKEN KILOMETER
393 West Broadway, New York, NY 10012
www.diaart.org
THE NEW YORK EARTH ROOM
141 Wooster St., New York, NY 10012
www.diaart.org
Text:MANAMI FUJIMORI
Photo:©Burt Glinn / Magnum Photos/AFLO、GETTY IMAGES(Roy Richtenstein、Dan Flasvin、Walter De Maria)、AFLO(Three Flags,Jasper Johns )
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