NEO DADA
日常のものにフォーカスした'50年代のニューウェーブ
ポップやハプニングの前触れとなったのは、'50年代半ば、ネオダダ旋風を巻き起こしたジャスパー・ジョーンズとロバート・ラウシェンバーグのアートだった。星条旗や標的を描いたジョーンズ。廃品や日常品をキャンバスに塗り込めたラウシェンバーグ。画家の内面性だの感情表現だのにはおかまいなしに、アートを芸術の高みから引きずり下ろす。
20世紀初頭のダダの精神を受け継ぐふたりの仕事は、一時期同じロフトビルに住む仲間として共同作業の要素も強かった。ふたりして、ティのアルバイトにファニーのウィンドウディスプレー励んだり、マース・カニングハム舞踊団の舞台装置を担当したり。孤高の芸術家の姿ではなく、ジャンルを超えての活動は、現代のコラボにまで影響を与えている。
ある日、ラウシェンバーグの仕事を見にやってきた画商レオ・カステリは、階下に住むジョーンズの作品と思いがけず出合うことになる。その場で個展が決まり、'58年1月のジョーンズ展は大評判。 『アートニューズ』誌の表紙
を飾り、M oMAが3点買い上げた。ポロックやデ・クーニングら抽象表現主義一辺倒だった美術界が動いた。それは、ポップからミニマル、コンセプチュアルへと、その後のアートの動きを独占することになる偉大な画廊「レオ・カステリ」の誕生の瞬間でもあった。
だれもが知るものを独創的に永遠に愛されるストレートな美
ジャスパー・ジョーンズ(1930-)
旗や標的、数字やアルファベットは、万人に通じる記号のようなもの。絵画に物語性やメッセージを込めず、ましてや見る人に解釈を求めず、平らなイメージを平らな画面に描き出す。キャンバスを重ねることで、絵画をより物体に近づけている。しかもなお、下地に新聞紙を貼り、蝋で固めた厚みある表面は、“絵画的”に美しい。圧巻の独創性。
さまざまな素材をコンバインして画壇に風穴を開ける
ロバート・ラウシェンバーグ(1925-2008)
最初はパール通り278番地。次はフロント通り128番地。イースト川にほど近いマンハッタン南端のビルで、ジョーンズと共に制作した5年間は、ラウシェンバーグの長いキャリアのなかでも最も豊穣な時代だった。《ベッド》《リーバス》《モノグラム》といったコンバインの代表作が生まれ、シルクスクリーン絵画への挑戦も始まっていた。
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ラウシェンバーグの大回顧展をMoMAで開催中!
半世紀を超えるキャリアの全貌が、250点余の絵画、写真、コラージュ、立体、映像、舞台装置、サウンド作品で紹介されている。ラウシェンバーグはすべてをやった。多彩な才能の仲間たちとともに。E.A.T.(アートとテクノロジーの実験)時代の珍しい《泥のミューズ》(1968-1971)の展示も。「ロバート・ラウシェンバーグ:仲間たち」展(5月21日~9月17日)
THE MUSEUM OF MODERN ART(MoMA)
11 West 53rd St. New York, NY 10019
www.moma.org
Text:MANAMI FUJIMORI
Photo:©Burt Glinn / Magnum Photos/AFLO、GETTY IMAGES(Roy Richtenstein、Dan Flasvin、Walter De Maria)、AFLO(Three Flags,Jasper Johns )
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