MINIMALISM & CONCEPTUAL
キーワードは“工業的”無機質な素材をコンセプトで見せる
合板やプレキシガラスを使ったそっけない箱。市販の蛍光管を並べた光のアート。これら彫刻ならぬ物体は、工業品の規格そのまま、色も形も単純にして最小限(ミニマル)の表現だ。批評家バーバラ・ローズが名付けた「ミニマリズム」のアートは、エルズワース・ケリーの単色のキャンバスなど絵画にもあり、ミニマル音楽やミニマル建築と同様、シンプルな美の代名詞になっている。
ミニマルアートの代表格ドナルド・ジャッドは、当初批評家として活躍し、草間の初個展に賛辞を寄せたばかりか、 「無限の網」の絵画を1点購入してもいる。その後ふたりは同じロフトビルをシェアする仲となり、 「あなたは絵より彫刻をやったほうがいい。箱みたいなものはどう」などと草間がジャッドにアドバイスしたとかしないとか。
「日付絵画」で有名な河原温も一時、東14丁目のビルの同じ階を草間とシェアしていた。河原の年譜では13丁目となっているけれど、1ブロック突き抜けのこの建物には、両方に入り口があったのだ。河原が黙々と日付絵画の制作に専念する一方で、当時、絵画からソフトスカルプチャーに転じていた草間が一心不乱に男根状の詰め物を縫っている。そんなふたりを想像するのは、何やら感慨深い。
極限までそぎ落とされた形と色今も残るスタジオも必見
ドナルド・ジャッド(1928-1994)
「ミニマリズム」の呼称で括られるのを嫌い、自らの作品を「特定の物体(スペシフィックオブジェクト)」と命名したジャッド。その心は、絵画と彫刻の両方の要素を持ちながら、そのどちらでもないもの。直方体や立方体の積み重ねや併置によって生まれる空間が、見る人の身体性に働きかける。手作りの痕跡のない工場発注品であるのも特徴。
光のマジックで祈りの空間を作り出す
ダン・フレイヴィン(1933-1966)
ロングアイランドの古い教会内部に常設展示された9点の蛍光管の作品。建物と一体化したひとつの作品であるよう構想され、作品選択や設置は作家自ら手がけた。木造建築から滲み出る光は、さながら光のチャペルのよう。キャンバスに電球や蛍光管を貼り付ける形で始まったフレイヴィンの光のアートは、空間を広げる環境アート。
作品で時空を旅したコンセプチュアルの第一人者
河原温(1932-2014)
ニューヨークのスタジオで、世界各地の滞在先で、定期的に制作された「Today」シリーズの日付絵画。始まりは、1966年1月4日。後に手製の収納箱が作製され、中面にその日の新聞の一部が貼られている。絵葉書の「I Got Up」、タイプ打ちの「I Met」、地図の「I Went」シリーズなど、継続するそのアート行為には、時間の観念と作家の意識が視覚化されている。
Text:MANAMI FUJIMORI
Photo:©Burt Glinn / Magnum Photos/AFLO、GETTY IMAGES(Roy Richtenstein、Dan Flasvin、Walter De Maria)、AFLO(Three Flags,Jasper Johns )
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