特集 2017/8/26(土)
女性たちが支えたアメリカン・アートの歴史 Vol.5

1960年~80年代、アートで問題定義した女性たち

モダン~コンテンポラリーアートのなかで重要な様式や潮流を発信してきたアメリカン・アート。そこにはあらゆる方面で深く関わった女性たちがいた。今も変わらない男性優位の体制のなか、アートシーンを力強く開拓していった女性たちにフォーカスを当てる短期手中連載。最終回となる今回は、1960年代~80年代にアートで議論を巻き起こした女性芸術家たちを解説。

オノ・ヨーコ

Photo: Getty Images

フェミニスト・アートとオノ・ヨーコ
 
1971年『アートニューズ』誌に掲載されたリンダ・ノックリンによる『Why Have There Been No Great Women Artists?(なぜ偉大な女性アーティストが生まれなかったのか?)』という挑発的な題名の論文が発表された。これは女性からの視座による美術史の再定義を促し、歴史上常に存在していた(けれど軽視された)女性アーティストをより多く美術史関連の文献に入れるよう呼びかけたもの。フェミニスト・アートには画一化されたスタイルや表現方法がなく、さまざまな手法やメディア、コンテキストが用いられた。かの有名なアート運動“フルクサス”に参加した後のオノ・ヨーコの『カット・ピース』(1965)などのジェンダー・パフォーマンス、身体をメディアとするスタイル、男性の女性に対する一方的かつ簒奪的な性的対象化から脱却し女性が自身の体を自分のものとするための表現、家庭に従属する女性という定義への反論、そして美術史の視座の転換などが行われた。

ジェニー・ホルツァーによるワード・アート。

この言説は女性アーティストが他の様式やアートムーブメントで表現する場合でも、通底したメッセージとして打ち出されることが多くなる。アイデアや概念こそが作品であり、手法や技法、あるいは作品という形態すらも必要としないとするコンセプチュアリズムでは、女性アーティストはよりはっきりと、スローガン的に彼女たちのメッセージを伝えることができた。
 
ワード・アート、それもTシャツ、デザイナーとのコラボレーション、インスタレーションやLEDを用いた大型パブリック・アートなど、メディア、素材を問わず暴力、圧力、セクシュアリティ、フェミニズムにカテゴライズされる政治的なテキストを発信し続けるジェニー・ホルツァー。そして彼女の友人であり、どこにでもあるようなモノクロの写真の上に赤字に白抜きの文章を配置し、現代文化における性的対象化における権力、アイデンティティ、ジェンダーの問題を強く突きつけたバーバラ・クルーガー。両者はコンセプチュアリズムの提唱者として70年代から活躍し、世界的な人気を誇っている。

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Text: Ryoko Oh

  • オー・玲子(ライター・リサーチャー)/学習院大学文学部哲学科美学美術史専攻卒。写真通信社、海外誌を中心にフォトリサーチャーとして勤務後、ライターとして活動。

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