特集 2017/8/26(土)
女性たちが支えたアメリカン・アートの歴史 Vol.5

1960年~80年代、アートで問題定義した女性たち

モダン~コンテンポラリーアートのなかで重要な様式や潮流を発信してきたアメリカン・アート。そこにはあらゆる方面で深く関わった女性たちがいた。今も変わらない男性優位の体制のなか、アートシーンを力強く開拓していった女性たちにフォーカスを当てる短期手中連載。最終回となる今回は、1960年代~80年代にアートで議論を巻き起こした女性芸術家たちを解説。

1989年に再び中絶は違憲か合憲かが争われた「ウェブスター対リプロダクティブ・ヘルス・サービス事件」。その際に行われたプロチョイス派のデモ。現在でもなおアメリカでは違憲派・合憲派が争い続けている。

女性芸術家の活躍の場、拡大

60年代から70年代にかけて、抽象表現のエリート主義に反発するようにネオ・ダダ、コンセプチュアリズム(概念芸術)、ミニマリズム、フェミニスト・アートなど様々なアートムーブメントや様式が次々に発生。アーティストたちの多様化が進むとともに、女性アーティストの活躍の場がより広く求められ、また彼女たちを支える言説にも同性からのサポートが入るようになった。

言葉をアートとして提示する“ワード・アート”で認知度の高い米女性アーティスト、ジェニー・ホルツァとクイア・アートの代表格、キース・へリング。1986年。

フェミニスト・アート「個人的なことは政治的なことである」
 
フェミニスト・アートは、1960年代末のベトナム戦争の反戦運動、公民権およびクイア・ライツ運動(現代のLGBT運動に発展)が最も盛んな時期に第二次フェミニズム運動と時を同じくして生まれた。フェミニスト・アーティストたちは、西欧キリスト教男性中心主義視点で描かれた美術史の見直しを図っていた。それと同時に、作品を通して前述の視座で確立された美術界および現代社会に介入し問いかける目的で活動していた。
 
このムーヴメント自体を女性の歴史と美術史における大いなるターニングポイントとし、スローガンは第二次フェミニズム運動と同じく「個人的なことは政治的なことである」とした。 フェミニスト・アート運動は過去、女性やマイノリティに対しては存在しえなかった平等な機会と場を作り出し、1980年代以降に続くアートムーブメントの動き自体の道筋を整えたと言える。まず、芸術界での扱いや表象における平等を目指し、女性アーティストによる団体がいくつも作られ、美術館や企画展などへの女性アーティストの登用を呼びかけ、女性アーティストのためのワークショップや作品作成の場を設けた。また、女性美術批評家もこの運動を理論面で裏打ちした。

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Text: Ryoko Oh

  • オー・玲子(ライター・リサーチャー)/学習院大学文学部哲学科美学美術史専攻卒。写真通信社、海外誌を中心にフォトリサーチャーとして勤務後、ライターとして活動。

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