インタビュー 2013/9/6(金)
世界が注目する旬の才能

この秋マスト! 究極のラブストーリー『わたしはロランス』グザヴィエ・ドラン監督にインタビュー

「僕は女になりたい」と恋人に打ち明けられたら? あるカップルの10年間にわたる“究極の愛”を描いたラブストーリー『わたしはロランス』が、いよいよ9月7日(土)公開。トランスジェンダーをテーマにしながらも、心を揺さぶる普遍的な愛の物語に昇華させたのは、カナダ出身の新鋭グザヴィエ・ドラン監督。あのガス・ヴァン・サント監督が太鼓判を押し、弱冠24歳にしてカンヌの常連、モデルとしても活躍するルックスをあわせもつ多彩な若き才能にクローズアップ!

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「これはトランスジェンダーの物語じゃない、ラブストーリーなんだ」

―この作品を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。
デビュー作『マイ・マザー/青春の傷口』の撮影中、スタッフの何人かと話をしていたときに、ひとりの女性スタッフが過去の恋愛体験について打ち明け始めたんだ。彼女によると、ある晩、恋人が「俺は女になりたい」と宣言したらしい。そう言われた瞬間に彼女が受けた衝撃は、ものすごいショックなことに違いないと思ったんだ。そして僕は想像した。もし、友だち、親、あるいはパートナーから突然、面と向かって、晴天の霹靂をカミングアウトされて、これまで一緒に過ごした時間にクエスチョンマークをつけられることになったらどんな気分になるだろう、ってね。その晩、自宅に戻ってすぐに30ページを書きなぐったよ。その時にはもうタイトルも、ラストも決まっていたんだ。
 
―この映画では監督、脚本だけではなく、衣装のコンセプトや編集も担当されていますね。あなたの映画作りは“何でも自分でやる”というスタイルなのでしょうか?
前作『HEART BEAT』のベルギーでの上映会の後、客席の女性に言われたんだけど、僕があまりに“何もかも”を担当することは、作品をダメにすることにつながるし、他の人たちの才能を活用できないばかりか、他の人から仕事を奪っていると言うんだ。そこで僕は答えたよ、「だったら他の人たちも自分の映画を作ればいいんじゃない。それに僕の映画では、自分に興味のあるパートがあって、かつその分野で才能を発揮する自信があり、僕ならではの何かを提供できるのなら、それらのパート全てを担当するのは僕の勝手だ」とね。
 
衣装と編集はそれぞれ性質の異なるパートだけど、どちらも自分で担当したいと思うんだ。両方とも熱中するほど興味があるからね。みんな、僕が『わたしのロランス』の衣装を担当したことに驚くけど、それは僕が好きだからやってるだけのこと。2000種類のスタイリングを選んだけど、たったひとりの人間の信念を盲目的に貫くのが監督だとは思っていないよ。
 
―あなたの描くキャラクターは辺境を好み、社会の淵にいるような印象を受けます。『わたしはロランス』でもそれは顕著ですが、あなた自身も疎外感を感じることはありますか?
疎外感を感じたことはないね、それは身勝手な考えだと思うから。「私は変わってる、みんなは私を理解してくれない」と考えるのは好きじゃない。僕は普通の男だよ。映画を観るということは、スクリーンのキャラクターの中に自分自身を見ること。それはつまり監督の考えていることに、自分自身を投影させること。自分自身を忘れ、コンプレックスを忘れる、寛大な行為なんだ。だからレッテルや枠組み、商業的な作品か作家性の強い映画か、ゲイかストレートか、といった問題はそこには存在しない。それを忘れるためのものなんだよ。それに『わたしはロランス』は、トランスジェンダーの物語じゃない、ラブストーリーなんだ。
 
>>次ページでは、この映画で描かれる“90年代”と音楽についてASK!

  • 『わたしはロランス』
    舞台はカナダのモントリオール。国語教師のロランスは、愛するガールフレンドのフレッドに「これまでの自分は偽りだった。僕は女になりたい」と秘密を打ち明ける。突然の告白に動揺し怒りをぶつけるフレッドだが、彼を受け入れ、共に人生を歩むことを決意する。しかし彼らを取り巻く周囲の偏見や好奇の目は、次第にふたりの関係を壊していき……。ある男女の10年に渡る愛の軌跡を描いた、激しくも切ないラブストーリー。主演のロランスを演じるのは、『ぼくを葬る』のメルヴィル・プポー。
     
    監督・脚本/グザヴィエ・ドラン
    出演/メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ
    配給/アップリンク
    公式サイト/http://www.uplink.co.jp/laurence/
    2013年9月7日(土)~、新宿シネマカリテほか全国順次公開

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