隙を見せれば会話が生まれる
―例えば上司へのプレゼンや、商談の場面ではとくに、失敗したくないと思うあまり、つい緊張してしまいます……。
談笑:でも、ゴルフなんかでも完璧にやろうと思えば思うほど、短いパットをはずしたりするじゃないですか。スポーツも会話も“普段通り”がいちばん。いつも通りの自分の口調で普通にしゃべればいい。そのうえで大事なのが、相手の言うことをちゃんと聞くということ。よく「話し下手、聞き上手に助けられ」って言いますけど、こちらがちゃんと聞こうとすれば相手は嫌な気がしませんし、しっかり聞くことで問題点も明確になったりして、話がかみ合ってきて会話もはずむ。説き伏せるより、盛り上げることを第一に考えるといいですね。
―ただ、相手に突っ込まれて、うまく答えられなかったらどうしようって、身構えてしまうこともあります。
談笑:それで失敗したっていいじゃないですか。失敗は次に生かせばいいし、「20%失敗しても80%は出来てたじゃん」て、自分を評価すればいい。ただし、無理に自分をよく見せようとしないこと。むしろ弱点をさらけだしたほうが会話はうまくいく。喫煙コーナーの会話なんてすごくフランクですもん、「何で俺たちやめられないかなあ」って(笑)
なまじ弱点をさらすより、畏まって見せるほうが礼儀にかなってて好印象なのでは? と思うかもしれませんが、私にいわせれば、それはビビって安全圏に逃げ込んでるだけのこと。自分をよく見せようとしているだけで、畏まられてる側の気持ちを考えてない。それじゃあ相手は心を開きませんよね。
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Profile : 立川談笑(たてかわ・だんしょう)
落語家。六代目立川談笑。早稲田大学法学部卒業後、1992年立川談志に入門。2005年真打に昇進する。古典を鮮やかにアレンジした落語を得意とし、独演会は常に完売するほどの人気落語家となり、現在、テレビやラジオのリポーターとしても、高い話術を活かし幅広く活躍している。
text : Miyuki Hama