特集 2017/11/17(金)

金曜日の毒母たちへvol.2―――ジョーン・クロフォード、娘を絞殺しかけたオスカー女優

「No Wire Hangers!!(針金ハンガーは許さないわ!)」 映画『Mommie Dearest』で子役を殴りながらこう叫んだフェイ・ダナウェイが演じていたのは、ハリウッドを代表する往年の美人女優ジョーン・クロフォード。人々は彼女をこう呼ぶ、“娘を絞殺しかけた鬼母”と……。

1949年、4人の養子とともに。左からクリスティーナ、クリストファー、双子のシンディとキャシー。カメラの前では理想の家族だった。

Photo: Getty Images

1977年5月10日、ハリウッドの黄金期を象徴する女優、ジョーン・クロフォードがこの世を去った。死因は心臓麻痺、死亡年齢は69歳と73歳の2つの説がある。1925年から1970年まで80本以上の映画に出演した大スターの死は一時代の終焉であり、アメリカ映画史に残る伝説としてその名は永遠に語り継がれる……はずだった。それから2年もたたないうちに、彼女の私生活における実像を暴くスキャンダルが巻き起こるまでは。

娘クリスティーナの髪を結うジョーン・クロフォード。極度の潔癖症で、客が座る家具にはすべて透明のビニールのカバーがかかっていたという。

母の遺体に別れを告げるとき、長女のクリスティーナは一滴も涙を流さなかった。翌1978年の秋、彼女は『最愛のマミー』という回想録を発表する。260ページにわたって、暴力的に子供たちを虐待するアルコール依存症の母ジョーンを告発した、驚くべき内容だった。本は書店に山積みされ、1981年に映画化されてベストセラーとなる。
 
https://www.youtube.com/watch?v=tUkE9qaVgmo
ジョーンを演じたのは、皮肉なことに、生前ジョーンが自分を演じられるただひとりの女優と名指していたフェイ・ダナウェイだった。伝記映画がこのようなシナリオで実現すると、果たして彼女は想像していただろうか?

誕生日パーティもピクニックもすべて「よき母、よき女性、よき女優」のイメージを撮らせるために開催。実は自称“リア充主婦”がインスタを撮るためにキャラ弁をつくるのとやっていることは変わらない。

クリスティーナが回想録で描き出すジョーンは、2つの顔をもった恐るべき母親だ。彼女は子供たちの誕生日やクリスマスには盛大なパーティを開き、カメラマンを呼び寄せて写真を撮らせた。にこやかで愛情深い表情は、取材陣が帰ると一変する。山と積まれたプレゼントは子供たちの手には渡らず、チャリティに出品されたり、次回のプレゼントとして使い回されたりした。だがお礼のカードはプレゼントの数だけ書かされ、ジョーンはそれを自分の手で編集して記者に渡していた。

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Original Text: CATHERINE ROBIN  Text: IZUMI MATSUURA

  • エル・ジャポン12月号 

    あの女優がDV加害者だった!? 12月号『エル・ジャポン』ではジョーン・クロフォードほか、ブリジット・バルドー、マレーネ・ディートリヒといった“毒母女優”の生々しい不都合な真実を掲載。

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