【XYZ世代別ヒロインで解く!】映画に見るジャパニーズエロスの世界
2016/09/01(木)
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『私の奴隷になりなさい』(2012年/角川映画) (C) KADOKAWA 2012

自ら堕ちる道を選んだ【Z世代のヒロインたち】

アイドルブームによって、若い女の子がもてはやされているように見えるものの、その反面、AVに至っては熟女女優の人気が強く、さらにグラビアアイドルの高年齢化も進んでいるという現在。これまで以上に大人の女の色気と積極性が求められている時代だとも言えるのがZ世代だ。

そんな時代を象徴するのが、29歳でデビューした壇蜜だ。『私の奴隷になりなさい』は、彼女が32歳で初主演し、全裸での激しいラブシーンを披露したことでも大きな話題となった作品である。

新入社員である主人公は、先輩社員で人妻の香奈に一目惚れして、猛アタックをかけるものの、全く相手にされない。しかし突然、香奈から「今夜、セックスしましょう」というメールが届く。しかし、ホテルでの香奈の行動は不可解なものだった。その後も香奈に振り回される主人公。やがて香奈が「先生」と呼ばれる中年男に調教されていることを知る。

板尾創路演じる「先生」の奴隷として、卑猥な命令に従う香奈(壇蜜)。縛られたり、バスの中でローター責めされたりと、SMプレイが延々と続き、辱めを受ける香奈の姿が描かれる。恥ずかしく辛い責めを受けているのに、香奈は幸せそうなのだ。責められれば責められるほどに、香奈の成熟した肉体は輝きを増していく。

SMの世界では、SはサービスのSでありMはマスターのMだという言葉がある。責めることでサディスティックな喜びを得ているはずのSは、実はマスター(主人)であるMにサービスしているに過ぎない、という意味だ。SとMの関係が実質的には逆転しているというわけだ。「先生」も、自分が香奈に縛られてしまっているということを知り、そこから抜け出そうとしていた。

この映画では、壇蜜演じる香奈の常に快感を押し殺しているような表情が、たまらなくエロティックだ。70年代の映画で描かれた“堕ちていく女”の魅力に通じるものがあるが、壇蜜には弱さが見えない。すべてを飲み込んでしまうような、底知れない奥深さがあるのだ。「先生」の奴隷でありながらも香奈は「先生」を食い尽くそうとしているし、年下の主人公も自分の性欲の餌としか見ていない。女性の性欲が、男性のそれを上回っているのだ。

 『恋の罪』DVD発売中/¥2,500/日活/ハピネット/©2011 『恋の罪』製作委員会

その前年に公開された『恋の罪』では、和子を37歳の水野真紀、美津子を38歳の冨樫真、いずみを30歳の神楽坂恵といった三人の30代女性が演じる。それぞれ表向きには家庭や子どもに恵まれ、刑事や教授といった仕事を持つが、夫以外と激しいセックスをする。

人気作家の妻でありながら、騙されてAVに出演したことをきっかけに娼婦になっていく神楽坂恵が演じるいずみ。その転落ぶりは21世紀の名美と言ってもいいだろう。しかし、そこには、どうしようもないやるせなさはあるものの、X世代の“男性によって堕ちていく女”の重たい哀しみは感じられず、むしろ彼女は自らの性を解放するために堕ちていくのだ。

草食化などと称されるほどに弱体化した男性の性欲に対して、女性は性に対して貪欲になっている。Z世代のヒロインたちは、自ら汚れる道を選びながらも、己の性欲に対して正直で、強くたくましい。

  • Recommend movies from Generation-Z

    『恋の罪』(2011年/日活)
    監督/園子温 
    主演/水野美紀、冨樫真、神楽坂恵
    https://www.amazon.co.jp/ 

    東電OL殺人事件をモチーフにした官能サスペンス。園監督ならではの猟奇的な描写と濃厚なラブシーンの洪水。3人の女優の体当たりの熱演に息を飲む。

  • 『私の奴隷になりなさい』(2012年/角川映画)
    監督/亀井亨 
    主演/壇蜜、真山明大、板尾創路

    覆面作家サタミシュウのデビュー作となった官能小説『私の奴隷になりなさい』を映画化。性奴隷として被虐の喜びにもだえるようになった女性と、彼女に翻弄(ほんろう)される男が行き着く先を見つめていく。

  • 『フィギュアなあなた』(2013年/角川映画)
    監督/石井隆 
    主演/柄本佑、佐々木心音
    https://www.amazon.co.jp/ 

    オタク青年と美少女フィギュア(マネキン人形)の奇妙な同棲生活を描く。役名もココネと名付けられた、佐々木心音のパーフェクトな裸身が楽しめる。柄本佑の変態っぽい演技も強烈。ダンサー役として壇蜜も出演。

  • 『愛の渦』(2014年/東映ビデオ)
    監督/三浦大輔 
    主演/池松壮亮、門脇麦
    http://www.toeiv.jp/ai-no-uzu/ 

    秘密クラブの乱交パーティに集まった男女8人の一夜を描く。本編123分のなかで服を着ているシーンが18分30秒のみで、ほとんど裸だという過激さが話題に。地味で真面目そうな容姿ながら、誰よりも性欲が強い女子大生というヒロインを門脇麦が好演。

text:Rio Yasuda

  • 安田理央/ライター、アダルトメディア研究家。1967年埼玉県生まれ。美学校考現学研究室(講師=赤瀬川原平)卒。主にアダルトテーマ全般を中心に執筆。特にエロとデジタルメディアの関わりに注目している。AV監としても活動し、2011年には、AV30周年を記念し、40社以上のメーカーが参加するプロジェクト「AV30」の監修者を務める。著書に『裏デジタルカメラの本』(秀和システム)、「OPEN&PEACE 風俗嬢」(メディアックス)、『エロの敵』(雨宮まみと共著 翔泳社)、「安田理央のB級グルメ道」 (オフィスマイカ)など。新刊『痴女の誕生』(太田出版)が好評発売中。
    http://www.lares.dti.ne.jp/~rio/

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