スルーされた作品&意外なノミネート
Y :その他、何かサプライズだったノミネーションってあります?
O :今年初めて、女性が撮影賞でノミネートされたんですよね(※『マッドバウンド 哀しき友情』のレイチェル・モリソン)。この流れのなかでタイミングよく。個人的には、撮影賞は14回ノミネートされて一度も取ってないロジャー・ディーキンス(『ブレードランナー 2049』)に受賞してほしいですけど。
Y :監督はもちろんだけど、裏方さんにも光が当たってほしいですね。
S :私はポール・トーマス・アンダーソン監督の『ファントム・スレッド』がここまで行ったのがサプライズでしたね。それまでスルーされてて、LAでは1館でしか上映されてなかったんですよ。
Y :『ファントム・スレッド』よかったですよね~。狂った愛の話。ダニエル・デイ=ルイスはこれで引退を表明してますけど、ダニエルが出たら即オスカーってのはやめてほしい(笑)。
S :ダニエルがオスカーを取るような作品じゃないですからね。でも、あんなナルシストの男、彼以外に演じられないですよね。その他、ノミネートを逃して残念だった人でいうと、アネット・ベニング。今年もチャンスはあったんですけどね。あと『君の名前で僕を呼んで』のパパ役、マイケル・スタールバーグ。実は『シェイプ〜』も『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』もこっそり出てるの。
O :彼は来年あたりにきそうですよね。スルーされた系でいうと、『ブレードランナー 2049』は前哨戦も全然入らなかった。
Y :ここまでスルーされるんだって。
S :コケたのが大きかったんじゃないですか。話題になってあれだけ騒がれただけに、コケた感が。
Y :空前絶後の大コケ感が……。
S :ダーレン・アロノフスキー監督&ジェニファー・ローレンス主演の『マザー!』も、映画祭を回ってあれだけやったのにスルーされて。
Y :ぶっ壊れた映画ですよね。5秒に1回ぐらい変なことになる。珍品としてはいけるんですよ。『ファウンテン』なんかより全然カルトで。
S :ジェームズ・フランコ監督の『The Disaster Artist』の元ネタになった『The Room』(※2003年のトミー・ワイゾー監督・主演の超物議を醸した自主映画。ブリー・ラーソン主演の『ルーム』とは別モノ)もカルトになったんだから、『マザー!』はすごいカルト映画になりますよ(笑)。
Y :ちょっと前まではオスカー作品って日本だとずっと先にならないと見れないことも多かったけど、昨年にも増して授賞式から間を置かずに公開する作品が多いですよね。外国語映画賞のノミネート作品も日本では公開がバンバン決まってて、粒ぞろいですよ。スルーされた『マザー!』は残念ながらDVDスルーですけど(笑)。
Text: Mirei Hirose
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【座談会参加メンバー】
猿渡由紀/LA在住映画ジャーナリスト。ハリウッドスターや映画監督のインタビュー、撮影現場レポート、コラムなどを日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿。今年のオスカー関連の個人的な推し作品は、3回鑑賞した『ゲット・アウト』。
よしひろまさみち/映画ライター。情報誌、女性誌、ウェブサイトなどで映画レビュー、インタビュー記事を連載。日本テレビ系『スッキリ!』などで映画コーナーも担当。個人的な推し作品は、ティモシー・シャラメくんが美しすぎる『君の名前で僕を呼んで』。
オスカーノユクエ/アカデミー賞、全米興行収入の話題を主にレポートするサイト「オスカーノユクエ」管理人。個人的な推し作品は、脚本力が見事な『スリー・ビルボード』。http://oscar-no-yukue.com/